風に揺れる金魚

カゲトモ

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 ふわん、と揺れたリボンから、リーン、と美しい音色が聞こえてきそうだった。

「こんばんは」

 髪で作った二つのお団子に結ばれたのは涼しげなオーガンジーのリボン。薄い生地のソレは彼女が動くと同じようにその身を揺らして、まるで涼しげな風鈴のようだった。

「今日はとても夏らしいお洋服ですね」

 全体的に淡いブルーで纏められた洋服は、ヘッドドレスからワンピースまで全て彼女、星見ロロさんの手作りだ。

「暑い日が続きますから、お洋服だけでも涼しげでいようと思って」

「とてもよくお似合です」

 彼女は少し俯いて照れたように小さく笑った。実際彼女にとても良く似合っている。いつもよりシルエットがスッキリしたワンピースは細部に施された刺繍が素敵だし、その耳飾りもとても綺麗。

「その金魚もご自分で?」

「あ、これですか? いいえこれはお友達の作品で」

 丁寧な手つきで触れたのは耳元で気持ちよさそうに泳ぐ金魚の耳飾り。まるで冷たい水の中を泳いでいるかのような透けた色味は、一体どうやって作っているんだろう? 素材はなんだ?

「プラバンってご存知ですか?」

 あの、子供の頃に遊んだ? 透明な板に絵を描いてトースターとかで縮めてキーホルダーとかにする?

「はい、そうです。彼女はそのプラバン作家で」

「そうなんですね。私の中ではおもちゃのイメージがとても強いんですが、こんなに素敵なアクセサリーになるなんて初めて知りました。本当に生きているみたいですね」

「ふふふ、そうでしょう? 良かったら見てください。鱗なんかも細かく描かれているんですよ」

「よろしいんですか?」

「私のお気に入りなんです。自慢させてください」

 そう言ってはにかんだ彼女が耳から外したイヤリングを受け取った。それは本当に丁寧に作られていて、鱗も目もヒレの先も、濡れたような質感も、愛情を込めて作ってるのが良く分かる品だった。

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