夏祭り

古畑 時雄

第1話 夏祭り

 今でも忘れられない、あの夏の日の出来事を……。


 僕は今でも思い出すんだ。そう、あれは高校三年生の頃の出来事だ。何時いつもの僕は友達に誘われ、近所で行われる花火大会へと向かった。お祭りの屋台でごった返すひと達を尻目しりめに、僕は友達と約束した八代やしろ神社の一本杉へと急いだ。


 その途中で僕は、同級生の女の子を見掛けたんだ。その子は僕と幼馴染おさななじみの女の子で、僕と違って友達皆んなからしたわれ、皆んながあこがれるそんな存在だった。だから僕は同じ高校に通っていたけど、高校に進学してからは、話し掛けるのにちょっと悪い気がしたんだ。


 今日は花火大会でお祭りと言う事もあり、彼女は浴衣姿に草履ぞうりと、何時いつにも増してあでやかな姿だった。すると彼女の草履ぞうり鼻緒はなおが切れ、困った表情を彼女は浮かべていた。僕は彼女に声を掛けていいのか迷った。そんな彼女は僕を見つけ、救いを求める眼差まなざしをしたんだ。


 僕は胸がドキドキして、頭が真っ白になってしまった。


つづく…

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