いつかの2人

今村広樹

本編

 ここは、世界の終わりの図書館。

 普段は1人の少女とネコしかいません。

 今日はどんな本を読もうかな?


トン、トン、トン

「はあい、どなた?」

と、少女がたずねると、メイド姿の女性が入って来ました。

「あら、お久ぶりね」

 そのメイドさんは、この図書館の常連さんです。

「今日は、なあに?」

「うん、これを返しにきたんだ」

と、彼女が一冊の絵本をもってきました。

 中身はこんな感じです。




 メグミンとウサギのライム、2人は仲良し。

 今日はどんなはなしをしてるかな?


「ねね」

「うん、どうかした?」

「日が暮れていくね」

「うん、それがどうかした?」

「こういう日は思い出すんだよね」

「なにを?」

「昔、なくしてしまったものをさ」

「うん、それってなに?」

「一番の問題わね、なにをなくしたのかさっぱり。忘れてしまったってことさ」

「あのね」

「?」

「そんなわけわかんないこといわれても、困るよ」

「たぶん、本当にすぐ近くにあるんだけど、いまはない」

と、言われて、ライムは自分の前の話相手を思い出しました。



(昔は彼もいたんだけど、今はどこに行ったんだろう?

それより私はぬいぐるみなのになぜはなせるのかしら?)


 と、喋っているメグミンの傍らにはライムの他に白骨化した人がいるのですが、なぜか彼女には見えません。


 メグミンとウサギのライム、2人は仲良し。

 今日はどんなはなしをしてるかな?



「それで、思い出したんだけどさ」

と、メイドさんは言います。

「昔のご主人が愛人を殺した時、その後もお仕えしてたんだけど、で、結局捕まった時、5。この本の中のウサギがあたしの言葉せりふいってんの」

「ええ、ホント?」

「うん、偶然そんなことって、あるもんだね」

「へえ……」

 少女は、どうリアクションしたものかという表情かおで、そう返します。

 少女の足元にいたネコは、そんなこと自分に関係ないといった風に、にゃあとアクビをしました。

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いつかの2人 今村広樹 @yono

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