第5話
桜の木の下を通ると、外の音が全て遮断された。静かに、そこに佇んでいる社は誰かを待っているように見えた。
周りには、桜の木が綺麗に咲いている。ここだけ違う空間のようだ。綺麗に咲いている桜の木にしばらく見惚れていた。すると、後ろに人の気配がしたので振り返るとそこには僕と同い年に見える女の子が立っていた。
「あなたは、だぁれ?」
そう聞いた女の子は、僕を見ながら首を傾げた。彼女は、神社によくいる女の人と同じ服を着ていた。赤と白が彼女の白い肌を映えさせていた。年は僕と同い年のようだ。
「ケイ、だよ。」
そう答えた僕は、顔が熱いと感じた。彼女は、ニコリと微笑みスーッと僕に近づいて来た。
「ケイくんだね。私、モモカ。よろしくね。」
彼女はニコニコしたまま手を差し出して、握手を促した。僕は、一瞬ためらったのだが、そのまま手を握った。彼女の手は真っ白で柔らかく、すぐにでも壊れてしまいそうだった。
「君は、ここで何をしているの?」
そう聞いた僕に彼女は変わらず微笑んで答えた。
「私?私は、ここでケイくんのような子と遊んでるの。」
ニコニコと笑っている彼女は、何を考えているのか分からない。それでも、僕と会えたことが嬉しかったのか、手を握ったままである。
「ねえねえ、ケイくん、一人なの?」
今、自分が置かれている状況を改めて言われると心が痛くなった。僕は、「うん。そうだよ。」と答えると、彼女は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、私と遊ぼう!」
そう言いながら僕の手を引っ張って、そのまま奥へと連れて行こうとした。僕は、抵抗することなく、そのまま彼女と一緒に遊ぶことになった。
気がつけば、もう暗くなりかけていた。元々、夕方だったのでそこまで遊ぶことが出来なかったのだが、いつも遊ぶことが出来ない僕にしては、楽しかった。
「ごめん。もう、帰らなきゃ。」
僕がそう言うと、彼女は悲しそうな顔をした。しかし、すぐに笑顔になり、「また、明日も遊ぼう?」と言った。
僕は、「うん!」と大きく頷いて笑った。
僕たちは約束を交わして、お互いに手を振って僕は家に帰った。
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