飛びつき厳禁

「ねぇ、ライナ

杖を消すのって、どんなイメージをするの?」


ユウは手に持っている杖を持て余していた

普通に内ポケットにしまってもいいが、少し邪魔になるのだ


「あぁ、それはね、カバンにしまうイメージだよ!」


ライナにそう言われ、ユウは杖を右手で持ち、左手を杖にかざす


(カバンにしまうイメージ…)


すると、杖が消えた


「おぉ!消えた!」

「ほら、出来たでしょ~」

「あの…」


2人で話していると、後ろから第三者の声がかかった

2人が振り返ると、一人の少女が立っていた


「あ、ユリン!どうしたの?」


ライナは、少女に近づき話しかける


「このホウキ、ユウちゃんのホウキじゃないかと思って、持ってきたのです」


そう言うユリンの手には、ホウキが握られていた


「あ…ホントだ、僕のだ!」

「もう、ユウしっかりしなさいよ」

「ハハハ…そういや、どうして良いか分からずに、その辺に立てかけといたんだ」

「まったく…ちゃんとしまいなさいよ」

「分かってるよ

ありがとう、ユリンちゃん」


お礼を言い、ユリンからホウキを受け取るユウ

そして、先ほど杖をしまったように、ホウキを片付ける

ユリンはニコニコしながら、それを見ていた


「ユリンの笑顔は可愛いよー!」

「ちょっと待て」


ユリンに飛びつこうとしたライナをユウが襟を掴んで止める


「ちょっと!何で止めるのよ!?」

「ライナの飛びつきをくらったら、ユリンちゃんが吹き飛ばされる」


ライナはそう言われて、ウッと詰まる

今日1日、ライナに何度も飛びつかれたユウが言うのだから、反論出来ない


「楽しそうですね~」

「そうかな?まぁ、退屈はしないかな」

「なによそれ!!てか、離してよ!飛びつかないから!」


ライナの声に、ユウはジーッとライナを見、仕方なく手を離す

もう一度ユリンに視線を戻した時、ユリンの着ているローブについていつバッジが目にとまった


「へぇ~、リンゴのバッチだ~」

「わぁ~!ホントだ、可愛い♪」

「そうですか!?嬉しいです♪」


2人にバッジを褒められ、照れながら笑うユリン

再びユリンに飛びつこうとしたライナは、やはりユウによって捕獲されたのだった


「そういえば、ユリンちゃんって何処のクラス?」

「私は同じクラスですよ」

「え!?気付かなかった」


ユウは驚き少し申し訳なさそうな顔をしたが、ユリンは気にしていない様子で続ける


「転入初日ですし、ライナちゃんがそばにいたから、それどころじゃないので仕方ないですよ」


ユリンの言葉に、そういえば…と今日1日を思い返すユウ

何かあれば、ことあるごとに飛びつかれ…もちろん、色々と教えてもくれたが…

気付けばリュウに引っ張られ…


(今日、2人以外と話してないかも)


セリーヌの事はカウントしていないユウ

わざとなのか、それとも単に忘れているだけなのか…多分後者だと思われる

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