ホウキの授業

「さて!転入生が来たことだし、今日は登下校に必要なホウキの授業をやるよ!

皆、外に移動して」


リーナの号令で、ゾロゾロと移動を始める

オロオロしているユウは、ライナに連れられ移動する


「ライナちゃん、ホウキって?」

「ライナで良いよ!ホウキの授業はね~、ホウキに乗って空を飛ぶ授業だよ!」

「…え?そのまんま…」

「うん、そのまんまだよ~」


会話をしていると、外のグランドに着いた

リーナがフワフワ浮かび、全員そろっているか数えている


(…普通に人が飛ぶっていうのがね…)


見慣れない光景ばかりで感覚がマヒしている中でも、人が空を飛ぶのは大きな違和感だった

数え終わったのか、リーナは地に着地する


「さぁ、ホウキを出して!」


皆はスッと手を前に出す

前には何も無く、しいて言えば空気がある

しかし、そこにパッとホウキが現れる


「あ、そうそう、ライナとリュウはホウキじゃなくてコレね」


2人に渡されたのは、スノーボードのような板

2人は、今出したホウキに手をかざし、パッと消してしまう

そして、スノーボードを受け取る


「リートは、減速を中心に練習しなさい

 ララは障害物を上手く避けられるように練習…それから…」


一人一人にアドバイスをしているリーナを見ながら、ユウは一人どうすべきか悩んでいた


(まず、ホウキが無いんだけど…)


そう、根本的な問題で悩んでいた

どう頑張っても、自分で解決できる問題ではない


「ユウ!」

「!!?」


急に名前を呼ばれ、声のした方を見る

そこにはライナがスノーボード片手に立っていた


「なに?ライナ」

「リーナ先生が呼んでるよ

 早く行っておいで」

「ふ~ん、分かった~」


ユウはライナに言われた通りリーナの元へ

呼ばれた理由が分からず、首を傾げる


「リーナ先生、何でしょう?」

「『何でしょう?』じゃ無いでしょ!

 ホウキが無いでしょうが」


ほら…と差し出されたのは、真新しいホウキだった

ユウは「ぁ…」と、呼ばれた理由がやっと分かったらしい


「『ぁ…』って…ユウって意外と天然ね…いや、意外じゃないか…(ルイの子どもだし…)

 とにかく、それがユウのホウキよ

 飛行が上手くなると、スノーボードやもっと難しい物に乗る練習をするよ」

「はい」

「じゃあ、まずホウキにまたがってごらん」


ユウは言われた通り、ホウキにまたがってみる

しかし、全く浮く気配がしない


「そのまま浮かぶ事をイメージするの」


リーナにそう言われ、ユウは目を閉じ飛ぶ事をイメージする

すると、少しずつ浮かび始めた


「そうそう、その調子よ」

「うわぁ…浮かんでる!?!」


地から足が離れ、ユウは驚き声をあげる

それをリーナは少し驚いた顔で見ていた


(ルイ…あなた、どんな世界で育てたのよ…

 誰でも空くらい飛べるのに、あんなに驚くなんて…)


リーナがそんな事を思ってるなんて、ユウは勿論知らない

ユウは驚きながらも、空を飛べることにウキウキし始めていた

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