花の雫

カゲトモ

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 月曜日、噂では近所のキャバクラのキャストはいつもよりも少ないと聞く。本当かどうかは知らない。だってその時間にそこへ行くことはないもの。俺だって仕事をしているからね。

「スカイさーん、次はなんかスッキリするやつがいいですぅ」

「はい、かしこまりました」

 胸の露出が多い服を着て、少し潤んだ瞳でオーダーした彼女をみると、やっぱりその噂は本当なのかなと思う。だって今日は月曜の夜なのに近所のキャバ嬢がお客として来店しているから。

「月曜はぁ、お客さんが少なくてぇ」

「それって本当なんですね」

「スカイさんもそうでしょ?」

 ・・・そうです。休みの次の日はどうしてもね。しかも今は夏休みだし、子育て層の足は遠のいてる感ある。

「飲み屋はみんな同じですよぉ」

「そうですよね。昨日どうでした?」

 特に気にもせず、昨日は出勤だったかな、くらいの気持ちで訊いたのに、アオイさんは「昨日・・・」と不穏に答えた。え、何、禁句だった?

 ぐりん、と勢いよく俯くと暫くアオイさんはそのままフリーズした。

 え、えー・・・

「う」

「え」

 様子を窺っていると突然小さなうめき声をあげた。どうしたのかと思っていると、パタパタとカウンターにいくつも水滴が。グラスからではない、アオイさんの瞳からだった。

「ううぅ」

 状況を把握できないまま、胸のチーフに手を伸ばした。

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