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セイケイ?
「・・・」
突然時間が止まったように一瞬の静寂が三人を包む。パチパチと斉藤君の瞬きの音が聞こえそうだった。
「中学に上がる前にセイケイしました」
そう言って目元と鼻を触った。それからフェイスラインも。
整形か。
「実は小さいことは本当に不細工で」
斉藤君か俺かどちらかが「なんで」という顔をしていたのだろう、カミキさんは全く気にしないようにさらりと言った。
「太っていた訳じゃないのに顔はパンパンだったし、目も凄く腫れぼったくて小さくて鼻も凄く低くて、鏡を見るのがとても嫌で。小さい島で育ったのでテレビで見るような酷いイジメはなかったけど、心無い大人の視線や言葉で傷つくことが多くて。自分は不細工なんだって物心がついた時から知っていました」
カミキさんは懐かしい話をするようにどこか遠くを見て言った。その顔がとても穏やかなのが印象的で。
「島には中学校が無くて、毎日船で隣の島へ通うか本州の全寮制の学校へ行くか、どちらだったんですけれど、とてもじゃないけど、この顔で知らない人に会うのが怖くて。昔から知っている人なら良くても、知らない人に顔を見られるのが嫌で仕方なくて。思春期だったんでしょうね、学校へは行かないと両親の前で泣きました。そうしたら両親が言ったんです、整形してもいいって」
親御さんが?
「整形することで自信が持てるのならって。正直怖かったですけど、顔の腫れが引いて初めて自分の顔を見た時、とてもホッとしたことを今でも覚えています」
そんなことがあったのか。ただのイケメンだとばかり・・・
「そんな暗い話じゃないですっ」
「え」
斉藤君が気付いたように姿勢を正した。
「実はこの顔、俺のお爺さんを参考にしてもらっているんです。血縁の中で一番の男前で。俺が生まれる前に亡くなっていたんで顔は写真でしか知らないんですけど、俺の顔を見たお婆さんは若い頃のお爺さんにそっくりだって嬉しそうにしていました。最初は反対していたけど、結果的に喜んでもらえたし、俺も自信が持てたんでやってよかったなって。それに今日は、そのお爺さんの誕生日なんです」
「それは、おめでとうございます」
「ふふふ、ありがとうございます」
カミキさんは本当に嬉しそうに笑って言った。その顔は幸福に満ちていて、とても、とても美しく思えた。
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