誕生日、おめでとう

カゲトモ

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「マスターってイケメンですよね」

 なんて素敵なことを言ってくれるから、つい変な顔で返してしまった。

「なんですって?」

 どこからどう見ても、訊ねたら百人が百人ハンサムだと答えそうなイケメンなのに、こんな俺に向かって言うなんて。

「本当のことを言っただけなのにな」

「私なんてカミキさんの足元にも及びませんよ」

「そんな風に言わないでくださいよ」

 なんて彼は少しだけ寂しそうな顔で言う。どちらかと言うと困った、という表情か。

「俺はマスターみたいな顔も好きなのに」

「ありがとうございます」

 そんないいもんでもないだろうに、どうして。

 カミキさんは優しげな瞳を細めて微笑む。言葉だけを聞けば嫌味に聞こえるかもしれないけれど、彼が言うと裏が無く素直に言っているように聞こえて悪い気はしない。俺も胸を張ってイケメンだって言っていいのか?

「誰が見てもイケメンだと思いますけど。ね、斉藤さん」

「はいっ」

 丁度接客を終えた斉藤君がニッと笑って現れた。ちょっと、笑ってるんじゃないでしょうね?

「いやだなぁ、僕は前からマスターはイケメンだって思っていましたよ」

 本当かなぁ? そんなこと言っても時給は上がらないよ? なんてね。

「私よりも斉藤君の方が何倍も格好いいでしょう?」

 俺みたいに無愛想じゃないし、爽やかで笑顔が可愛いじゃないの。

「マスターは僕やカミキさんとは違う、男らしさがあるっていうか」

「男らしさ、ね」

 確かにカミキさんみたいに上品さは兼ね備えていないけれどさ。

「一つ、俺の秘密を教えましょうか」

 俺の顰めた面が面白かったのか、カミキさんは糸ほど目を細めて笑ってから言った。

「実は俺、セイケイなんです」

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