暇つぶし

@dennsyobato

第1話

 夏の暑さが厳しくなってきた最近、窓辺に座る彼女と一緒にのんびりとした時間を過ごしていた。

 彼女はヘッドホンを付け集中し、ノートに何かを書き込んでいる。

 僕はそんな彼女の隣で床に寝転がり、読みかけの本を読んでいた。

 少し本に区切りがついた時、特に用事はないが何となく話しかけてみることにした。

「どう? 進み具合は?」

「うん……。ぼちぼちかな? できれば家に帰るまでにはもう少し終わらせておきたい」

「そうか……」

 僕は本の続きを読みながら彼女と会話をする。一方、彼女は作業を続けているがヘッドホンを外していた。

「もう少し窓を開けてくれ」

「ほい」

 彼女は手を止めることなく、足を器用に使い窓を開ける。

「おい……。人の家の窓を足で動かすなよ……」

 外を見ようと顔を向けるとそのような行動を目にしたので、昔からの付き合いでどのような動きをするかは分かっているが、ついその事に対して思ったことを口にしていた。

「あー、ごめん、ごめん」

 わかりきっていた返事。

 長い付き合いだからこそ、このようなやり取りは何度か行っていた。なので特に怒りも呆れもしなかった。むしろ最近では僕が許せる範囲であれば、それも彼女の個性の一つだと思うようにしていた。

 僕は手に持った本に再び目を戻した。

 

 しばらく時間が過ぎて、再び本に区切りがついた時、腕時計で時間を確認する。集中して何かをやっていると時間がわからなくなるので、できる限り付けるようにしていた。

 午後五時

 僕たちがここにきて三時間ぐらいだろうか。そこまで時間がたっているとは思わなかった。

 彼女の方を見ると、最後に見た時には外していたヘッドホンはすでに付けていた。

 僕もそうだが、彼女はここにきて集中し始めた時からほとんど動いていなかった。

「この後、私の家に来る? お母さんが久しぶりに『会いたい』ってさ。それと手作りのお菓子もあるから食べてってよ」

「え……?」

 驚いた。

 さっき見た時には話しかけてくる雰囲気じゃなかった事と、彼女からの誘いはちょくちょくあるがそれでも少ないので、どうしてもこのような反応になってしまうだろう。

「……どうしよう? 家に送り届けるのはいつものことだからいいけど……」

「今日そのまま、家に泊まっていきなよ。お母さんはあなたならいつでも歓迎と言っていたし……。勉強とかでわからないところや、助けることがあれば色々と教えるよ〜」

 驚いている僕とは変わって、彼女はにやにやとしていた。

「で、結局今日何をやっていたの?」

 唐突に話を変える。そうしなければ、からかわれるような気がした。

「自由研究だよ。早めに終わらせておかないと大変だからね〜。そういえばあなたは終わっているの?」

 二人はしばらく相手の顔を見続ける。

「……なあ今日止めてくれよ」

「わかった」

 そう言うと彼女は作業を再開し始めた。

 僕も少しした後、本を読みだす。

 彼女の方を見ると僕の部屋に来た時に比べ、嬉しそうに見えた。

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