第64話 次にやることは?

「んー!良い朝だ」


 襲撃があった翌日。

 前日とは全然違い、快晴だ。


「もう朝なのー?」

「そうだよ、だから起きないと」

「わかったー。ペイルー」

「うんー……」


 いつもの朝がまたやってきた。

 やっぱりいつも通りがいい。


「そういえば昨日潰れたから今日が最初の授業か」


 夏休みが終わってからまだ授業が始まっていない。

 なにをやるんだろう?

 新しい魔法だろうけど気になる。


 考え事をしている間に支度は済ませた。

 シロとペイルはずっとボーっとしたままだから俺が用意してあげた。

 まだ夏休みボケが残っているみたい。


「ほらいくよ」

「「はーい!」」


 今日は昨日よりもすこし遅めに向かった。

 そのせいか、すでに何人か教室にいた。


「おはよー」

「ジルくん、おはよう」


 ラウくんはもう来ていた。

 それに手に何か持っている。


「それはなに?」

「これ?これは夏休みに集めていた石だよ」


 見せてもらうと、石の標本だった。

 いろいろな色がある。

 赤色や緑色、黒色に虹色まである。


「すごいね、この虹色の石」

「それは虹ができるところにあるって言われている石だからね。たまたま虹の近くにいたから見つけたんだ」


 たしか虹って水の反射とかだったような。

 でも実際にあったんだから特別な石なのかな。


「フウちゃんが熱心に見ているのも一緒?」

「そうだよ。なぜか興味を持ったみたいで」


 さっきから手にとっては見て戻し、手にとっては見て戻しを繰り返している。

 その石、さっきも手に取っていたぞ。


「みんなおはよー!」


 ユリ先生と一緒にシルヴィ先生、リーシュちゃんとクロとシャルちゃん、ネルちゃんが来た。

 なんで一緒に?

 それにみんなして何か持っている。


「せんせー!それなんですか?」

「これはねガウくん、明日のために使うものだよ!」


 ぱっと見、地図と人数分のリュック。

 あとは旅に使いそうな道具だらけだ。


「もしかして冒険?」

「んー!惜しいけど残念!」


 合っている自信があったけどまさかのはずれ。

 でも惜しいって言っていたからどこかに行くのは合っていると思う。


「ここから西に行くと大きな国があるのは知っている?」

「ランダ王国?」

「そう!さっそく明日なんだけどみんなでそこに行くよ!」


 父さんがいる軍がある王国だ。

 あまりにも唐突だな。

 元々昨日が学校の初めだったからなのかな。


「ジルくん、ちょっといい?」

「えっ、はい」


 シルヴィ先生に呼び出された。

 他のみんなはユリ先生から続きを聞いている。


「今回王国に行く理由なんだけど、ジルくんたちが呼び出されたからなの」

「俺たちが?」

「ええ、昨日の出来事を耳にした国王様が会いたいそうよ。私は詳しくは教えてもらえなかったけど」


 情報が早いなあ。

 国王に呼び出されたとなら断るにはいかない。


「でもなんで俺だけ?」

「特に気になってみたいなのがジルくんみたいなの。私からはこれだけよ」


 なんで俺なんだろうか。

 どっちかというと炎を消したリーシュちゃんとペイルを見ると思うんだけど。


「じゃあ続きは中で聞きましょう」


 教室に入り、続きを聞いた。

 予定は明日、学校から西に向かって歩いていく。

 ほぼピクニックみたいなものだ。

 いつも教室に集まる時間に行けば昼頃には着く。

 そのため教室に集まる時間が出発の時刻になった。


「昨日はあんなことがあったから今日は自由に!夏休みあったお話でもいいわよ!」

「……予定と違うんだけど」


 ユリ先生が言ったことにシルヴィ先生が驚いた。

 予定と違うって……。

 自由過ぎるじゃないか。


「獣人にも王国とかはないの?」

「もちろんあるよ。だけどランダ王国よりは小さいね」

「わっちのところは国すらないでありんす」

「じゃあフウちゃんのところはどうなっているの?」

「リーダー各の家系がいつも長になるでありんす」

「フウちゃんがその家系だったり」

「そうでありんすよ?」


 まさかの本当だったー。

 冗談のつもりだったのに、将来長になる人だった。


「ま、まさかラウくんもそんな感じとか……?」

「全然違うよ!僕は普通の家で生まれたよ」

「よかったー。俺と同じか」

「同じって……。ジルくんのお父さんって軍の隊長じゃなかったっけ?」


 獣人にも王国があるってことは国王もいるのかな?


「その王国にも国王はいるの?」

「今はいないよ。前の王様が亡くなってからまだ後継争い?が続いているみたい」

「前の国王は誰だったの?」

「ターダスと言って獣王とも呼ばれるほど強かったライオンの獣人だよ。ちょっと性格が悪かったみたいけど」


 百獣の王だけあってすごいな。


「でもなんでその人が亡くなったの?」

「よく知らないけど、旅に行ったきり20年も帰って来ないみたい。だから死んだことになって次の王様を決めているよ」


 もしかしたら生きているかもしれない。

 といっても20年か。

 希望は薄い。


「一応フウちゃんのほうは?」

「一応ってなんでありんす!」

「ごめんごめん、それでどうなの?」

「言わないでありんす!」


 その後、あやまって聞こうとしたけどかたくなに言わなかった。

 本当、変わっただけなのは見た目だけだった。

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