第47話 ジルの修行?

 番外編です


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 修行が始まってから一週間。

 ようやく俺はクーリアさんの攻撃を始めて避けれた。

 防御はちょくちょくできたけど完全に変わるのが初めてだった。


「よしゃああ!!」

「おめでとうございます。では引き続き避けてください」

「えっ!休憩もなしに!?」

「甘えてはいけません。ですが、一度でもよければまた避けれますよ」

「そんなこと――ガフッ!」


 話しをしていたせいで瞬時に避けれなかった。

 だけど、少し遅くしてくれているのかな?

 今までより遅く見えてきた。


「大丈夫ですか?」

「う、うん。気を抜かないようにするよ」

「ではもう一度」

「よっと!」


 よし!よけれた!

 やっぱり今までより少しゆっくり見える。

 まあ少しでも遅れたらかすっちゃうけど。


「いい反応です。やはり人は若いと成長が早いですね」

「クーリアさんと10ぐらいしか変わらないと思うけど……」

「そうでもないですよ。人の年で言えば50は超えています」

「うそー!!」


 クーリアさんは高校生の見た目。

 というか高校生ですって言われても普通に信じちゃうぐらい若く見える。

 ラグドラーグさんがあんな見た目だから相当長生きしているんだよね……。


「ドラゴンの年が気になりますか?」

「まあちょっと」

「話に気を取られないようにしてください。私のようにまだ若いドラゴンや全盛期のドラゴンは人の姿になると若い姿になります」

「ラグドラーグさんはもう違うってこと?」

「師匠は別です。老いてもあの強さは異常です。が、本来の人の姿はもっと若いですよ」

「じゃあ今の恰好は?」

「『この方が威厳ある』ということであのような格好をしています」


 考えたらペイルも変身で人の姿になっている。

 やろうと思えば見た目も変えられるのかな。

 となるとペイルは好んであの格好に?

 美少年とかずる過ぎるだろ……。


「ほら、まだ続きますよ」

「あぶねっ!」

「気を抜かないことです」


 あぶねぇ!

 少しでも考え事をすると当たってしまいそうだ。

 だんだん避けれるのも余裕が出てきた。


「いいですね。もうこの速さだと避けれますね」

「苦労したけどね…」

「一週間でここまで成長できたのです。自信を持っていいですよ」


 その言葉がすごくしみる。

 努力をしても報われないときもある。

 こういう風に報われるとすごくうれしい。


「次はどうするの?」

「次は魔法を交えながらやります。予行練習みたいなものです」

「魔法か……使える魔法も増やさないと」

「今日は早いですが終わりにしましょう」

「えっ!いいの?」

「はい。一週間でここまでくれば十分です。せっかく時間が余ったので何かしたいことはありますか?」


 それならやりたいことがあった。

 今ならそれができそうだ。


「画材ってある?」

「ええ。ありますよ」

「じゃあ貸してくれませんか?」

「いいですよ。待っていてください」


 よし、後はもうひとつ頼むだけだ。

 これを断られたら別の何かを描けばいいし。


「お待たせしました。こちらでいいですか?」

「うん!それでもう一つのお願いですけど……」

「いいですよ。私ができる範囲なら何でもしますよ」


 今この人、何でもって。

 いや、そういう事ではなくて!


「ドラゴンの姿になってもらえますか!」

「え、ええ。どうしてですか?どこかで絵を描くためですか?」

「クーリアさんを描きたいんです!」

「わ、私ですか!?」


 そこまで驚くとは思わなかった。

 絵のモデルになるのはやっぱり恥ずかしいよね。

 俺もモデルになってって言われても嫌だって言いそうだし。


「今日だけでしたら、いいですよ」

「ありがとうございます!」

「ここでは狭いですね。どこがいいですか?」

「えっと、森の中に川が流れている場所ってありますか?」

「ありますよ。そこにしますか?」

「お願いします!」


 さっそくその場所へ移動。

 ついて思ったことは思い出がいた通りの風景。

 ここに鹿や蝶が飛んでいたら幻想的な場所だったろう。

 前の世界でこういう景色を描くにしても移動だけで諦めていた。

 いつもネットで見るしかなかった。


「綺麗……」

「そうでしょう?師匠がつくる森はただ木々が生えるのではなく、道筋を見つければこのように川もつくります」

「こういうのをサラッとつくるって本当にすごいや」

「ええ。私はそんな師匠を尊敬しています」


 見ているだけでも時間を潰せる。

 できることならカメラが欲しかったなあ。

 絵で取って置くだけではもったいない。


「じゃあそろそろ始めますか」

「は、はい。お手柔らかにお願いします」

「はーい!」


 クーリアさんがドラゴンの姿になった。

 どういうポーズがいいか聞かれ、川のそばで寝ている姿とお願いした。

 少し丸くなるように寝ていて、体勢としても楽らしい。


 さっそく一枚。

 クーリアさんが気になったみたいでわざわざ人の姿に戻って見に来た。


「上手ですね!まるで風景をここに押し込めているみたいです」

「ありがとう。他にも何枚か描いていい?」

「いいですよ。こんなに綺麗に描いてくれるなら喜んで手伝いますよ」


 2枚目、3枚目とどんどん描いていった。

 クーリアさんは喜んでいて、1枚自分用に描いてくれないか言われた。

 もちろんいいよと答えた。


「どういうのがいいですか?」

「私とジルくん。2人が写っているのは無理かな……?」

「こうすればいいかしら?『第三の眼サードアイ』、それに『眼視鏡ミラー・オブ・アイ』」


 最初の方は何が起きたかわからなかったが、2つ目のほうはすぐ何が起きたか分かった。


「鏡、俺とクーリアさんが写っている」

「最初に使ったのはこの目以外から一定距離以内の別の視覚をつくる魔法、次に使ったのがその見える風景を鏡に映す魔法です」

「これなら描けそう!ちょっと待っててね」

「ええ。待ちますよ」


 鏡を見ながら絵を描いた。

 自分を描くのはどうも恥ずかしい。

 なにせ自分の顔を何回も何回も見るんだ。

 こっちに転生して前より良くなったけど既に5年も見ている。

 どっちにしろ恥ずかしい。

 ちょっと誤魔化しを入れて描き終わった。


「そろそろ戻りましょうか」

「あ、もうこんな時間か」

「ええ。帰りましょうか」


 今日はゆっくりできた。

 こういう日が増えればいいんだけどなあ。


◆~ クーリア・メアトラス ~


 やったわ!

 ジルくんに絵を描いてもらっちゃったわ!

 しかもツーショット!


 どうしましょうか。

 部屋に飾るとサリアに見つかる可能性があります。

 いや、せっかくだから飾ったと言えばいいわ。


「何してるんすか?」

「キャアっ!!」

「そんなに驚かなくても……」


 びっくりしたわ。

 いつも私の背をとるのが上手いのよね。

 第三の眼サードアイを常に発動させておきましょうか?


「クーリアちゃんとジルくんっすね」

「そうよ。ジルくんが絵を描くのが上手で描いてもらったのよ」

「へぇー!ジルくん優しいっすね」


 よかった!

 少しボロが出ちゃったけどスルーしてくれたみたい。


「いいっすね。うちも描いてもらおうかなあ」

「だ、だめよ!」

「なんでっすか?」

「今は彼たちの修行中ですよ。そんな暇はありません。そうでしょう?サリア」

「そ、そっすね」


 つい強めに言っちゃいました。

 これは私の宝なので他の人にも描いてはほしくないです。

 わがままだったでしょうか……?


「まあそれは置いといて、ご飯できたっすよ」

「じゃあ行きましょう」


 こんな日が永遠と続けばいいのに。

 そんな贅沢なこと起きないかな。

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