第44話 ジルの修行1

 区切りで短くなったりしますがよろしくお願いします。


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 この木はてっきり目に見える範囲だけかと思った。

 なんとしたの階があったんだ。

 ご飯を食べるときや寝るときなどは下の階となっている。


「ここの階は生活するところです。ジル様はあちらの部屋を使ってください」

「様はいらないよ。ジルで!年もそうだし弟子になった順に見ても立場は俺のほうが下だし…。俺のほうが様をつけて呼んだ方がいいのかな…?」

「で、ではジルくんと…。私は今まで通りでかまいませんよ」


 なんでモジモジしながら言うのさ…。

 軽く言ったりするのは失礼だったのかな?

 様付けになんて慣れないから軽いほうが嬉しいんだけど。


「水浴びは向こうにあります。食事部屋はこちらです」

「似たような部屋でわかりづらい…」

「そこは師匠に言っていただけると…。私たちも同意見でしたので」


 なんで全部似たような部屋にしちゃったんだか…。

 最初のうちは階段から降りてこっち感覚で覚えておこう。

 とりあえず早めに慣れておかないと。


「では私は用意してきます。向こうのテーブルで待っていてください」

「はーい!」


 座って待っているとリーシュちゃんにシロ、ペイルもやってきた。

 もちろん修行をしてくれているラグドラーグさんとサリアさんも。


「今日はクーリアか。それなら安心だ」

「師匠それってどういうことっすか~」

うぬがつくると味は良くても見た目が悪い」

「ひどいっすよ~!」


 一体どんな料理を作るんだ…。

 味が良くて見た目が悪いって調理のせい?

 それとも食材が食材なのか?


「お待たせしました。どうぞ」

「「「おおー!!」」」

「さていただくか」

「いっただっきま~す」


 見た目はすげえ美味しそう。

 あんな短時間でここまでつくれるのか。

 こっちの世界に来てから料理の多さと美味しさに驚いてばっかり。

 食材が増えるとここまで変わるものなんだ。


「美味しい…!」

「ふふっ。ありがとうございます。まだありますがこの後も動くのでそこを考えて食べてくださいね」


 そうだった…。

 この後もまた痛いのが続くんだ。

 食べ過ぎたら危なくなるから抑えておかないと。


「そういえばみんなはどういう修行だったの?」


 今更だがペイルは犬ではなくドラゴンの姿に。

 ペイルもその方が楽みたいでご飯を食べたらぐったりしている。


「私はふつうに新しい魔法を覚えるようにひたすら練習よ」

「シロはいろいろと教えてもらっているよ!例えばこの花は薬草?になるとか!」

「あれ?てっきり戦ってたりしていると思ったよ」


 シロのことだからてっきり戦いっぱなしかと。

 強くなれるって聞いてすごく喜んでいたし。

 意外だな。


「知恵は付けとくべきっすよ~。ドラゴンでも頭なしに戦うのは良くないっすから」


 というよりよくシロが真面目に聞いてくれたな。

 俺が教えるときも結局はあそぼー!って言って終わってしまう。

 この人案外すごいな…。


「では後は頼みます。洗う順番はみんなで決めておいてください」

「みんなでやっちゃだめなのー?」

「場所が狭いから一人がいいっすんよ。クーリアなんだからジルくんだっけ?」

「そうです」

「ジルくんから始めてシロちゃん、リーシュちゃんにすればいいんじゃないっすか?」

「わかったー!」


 ということで俺が最初の皿洗い。

 手伝っていたからさほど時間もかからないだろう。

 人数が多くても同じ動作が少し増えるぐらいだし。


*


「終わりましたか?」

「はい。みんなはもう?」

「もう行きましたよ。私たちも戻りましょうか」


 ああ…。

 また痛いのが続くのか。

 何か少し時間を伸ばせないかな?


「クーリアさんって武術が得意って言ってましたよね?」

「そうですね。大体はそっちで対処してます」

「魔法はどうなんですか?」


 伸ばすためもあったけど気になってたこと。

 魔法があれば、剣があれば、武術があればいい。

 大体みんな一本に絞っているけど。

 それでもみんな魔法は多少使えるまでにしている。


「もちろん使えます。ドラゴンの姿では武術は難しいので…」

「まあ、そうだよね」

「ですので魔法も武術ほどではありませんが得意ですよ」


 武術ほど得意だったらどんだけハイスペックなんだよ…。

 それでもさすがドラゴン。

 両方使えるなんて、生まれただけでチートだな。


「何なら見てみますか?」

「さすがにここでドラゴンの姿には…」

「安心してください。この姿でもできます」


 よし!上手く時間を稼げた。

 初日からずっと痛いのは正直辛い。

 甘えているのはわかるけど今日だけ!


「場所も場所なので火の魔法は抑えておきます」

「小手調べの時は容赦なく使ってたけど…」

「あ、あれはとっさに使ってしまっただけなんです!」

「そ、そうですか」

「少し外へ出ましょう。そっちの方が見やすいと思います」


 戻ったけど結局また外へ。

 相変わらず見晴らしがいいなあ。


「あの木を見ていてください」

「一本だけ飛び出ている木?」

「そうです」

「随分遠いところにあるけど…」


 目を細めないとくっきりと分からない。

 目はいい方だと思うけど、なんでその遠くの木を?


「行くよ。風弾ウィンドバレット


 すごい風圧!

 とっさに顔の前に両手で防いでいた。

 まさか、まさかだけど…。


「当たった…。しかも倒れている」

「これは遠距離魔法だから武術が通用しない敵にいいです。でも連発するには一発一発の間隔時間が長いため、そこまで使いません」

「十分強いのに…」


 その魔法があれば十分やっていけるでしょ…。

 これで使わないってどういうことなんだよ。


「人の姿では使わないってことです。ドラゴンの姿ではよく使いますよ」

「そういうことね」

「では修行に戻りましょう。時間がもったいないです」

「……はい」


 あまり時間を稼ぐことはできなかった。

 強くなるためだ。

 早く瞬発力をあげれば楽になる…はず。


「では始めますよ」

「お、お手柔らかに…」


*


「つ、疲れた…」

「お疲れ様です。ある程度避けれるまではこれを続けます」

「続きがあるってこと…?」

「もちろんありますよ。頑張りましょう」


 修行の第一段階、瞬発力の向上。

 それなりに避けれるまでに1週間かかった。

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