転生ギフトでドラゴンを貰いました。

第43話 小手調べ

「クーリア、本気は出すな」

「はっ！」

　木の中に移動した。

　中はくりぬき、修行部屋になっていた。

　部屋は広いし、強度もあるみたい。

　道場に近い感じになっている。

「今更だけどラグドラーグさんって弟子を取っていたんだね」

「ああ。ドラゴンによるが儂は弟子をとっている。ただし、認めた者だけだ」

「ようするにクーリアさんも認めた者だから強いってことかな？」

「そういうことだ。若いドラゴンとは思えないほどにな」

　というとシロより強いってことでしょ？

　俺、シロ相手でも死にかけたんだけど。

　というか死んだよ！

　ここだと復活とかもあるのかな？

「無論、死なせはしない。その時は儂が止める。好きな時に始めろ」

「いつでも構いません。どうぞ」

「ではありがたく！水圧砲（ウォーターレーザー）！！」

「ふむ。なかなか強い魔法だ」

　シャルちゃんとネルちゃんに使った魔法。

　威力もあって俺の中でも強さが上の方の魔法だ。

　相手はドラゴン。

　いきなりこれぐらいの魔法を使わないと歯が立たないだろう。

「……が、」

「ふっー……。はっ！」

「え！？」

「それぐらいの魔法だと全て消されるぞ」

　嘘だろ！？

　仮にも人の姿だ。

　ドラゴンほど大きくもない手で魔法を消された。

　明らかにこっちの魔法のほうが出かかったのにもかかわらずだ。

　しかも今、魔法を使ってなかったよね？

　どうやったんだ…？

「次、どうぞ」

「今の魔法でも無理なら…。出てきて！神水晶の杖！」

「む、見たことが無い杖だな」

　それって俺が死にかけていた時に持っていた杖だよね？

　あの時はそれどころじゃなくて言わなかったけど、なんで杖？

　思ったように魔法が使えないから使っているとかかな。

　でも杖を使おうがそこまで上がらなかった。

　あの杖はそんなにすごいものなのかな？

「行くわよ！水竜（ウォータードラゴン）！！」

「「「！？！？」」」

　えー！

　何そのチート技！

　さっきの水圧砲（ウォーターレーザー）とは比較できないほど強そう。

　いや、絶対に強い。

　その魔法って人に向けちゃダメなんじゃ…。

　絶対に木端微塵になるよ。

「くっ！火炎乱舞！！」

「ほう！クーリアにそこまでさせるか！」

「うそでしょ！？無傷なんて…！」

「危ないところでした」

　それ絶対嘘！

　なんで水相手に火で相殺できるんだよ！

　それに全然動きは見えなかったし。

「ではこちらも行きます。死なないように手加減しますが、痛いですよ！」

「え？ガハッ！！」

「ジルくん！？」

　な、なんだ…？

　ほんの一瞬で吹っ飛ばされたのか？

　瞬きはしていない。

　本当にいきなり吹っ飛ばされた。

「いててて…」

「大丈夫なの？」

「うん…。そこまで痛いってわけじゃないんだよね」

「吹っ飛ばされたのに！？」

　そりゃあ飛ばされたんだ。

　痛いには痛い。

　ただ倒れたかのような痛さしかない。

「私は火と同時に風も操ります。それと肉弾戦が得意です。今のは風の魔法でダメージを軽減させただけです」

「肉弾戦が得意？それならこれだ！水の円舞（バブル・ダンス）！」

「なるほど。動ける場所（スペース）を減らしましたか」

　ただの水の泡。

　練習の的に使っていたが、水の中なら動きも鈍る。

相手が火ならなおさらいい。

　風の対策もしてある。

　風の魔法で動かそうとすれば切れて分裂する。

　そして元の大きさまで膨らむ。

　今の状況なら便利すぎる魔法だな。

「ではまずこちらから！」

「えっ！？いたっ！！」

「リーシュちゃん！！」

「あなたも戦闘中です。忘れないでください」

　そんな馬鹿な！

　クーリアさんの周りに水の泡をつくったんだ。

　多少なりとも動きづらいはず。

　それなのにさっきと同じように何も見えない。

　本気出しているんじゃないのか？

「くっ！」

「ん？これは分裂するんですか」

「そう！これなら身動きが取れないでしょ！」

　泡を消そうと手刀で斬ったが残念！

　分裂するんですよそれ！

　それに俺の意志でも動かせる。

　もちろん鈍らせるためにクーリアさんに近づけた。

「これなら動けないでしょ！」

「ええ、普通なら無理でしょう」

「そうだろうね。くらえ！ウォータ――」

「でも私なら出れますよ？」

「う、うそでしょ…？」

　また、消えた。

　声は後ろから聞こえる。

　振り返りたくない…。

「…どうやって？」

「泡に触れれば動きが鈍る。それは体を覆うほどの大きな泡だけ。なら小さい泡ならどう？」

「そんなことしたら膨らむはず…あっ！」

「細かい泡なら抵抗なく動ける。そうするには速くなればいい」

　どんだけ速いんだよ…。

　膨らむのはそれなりに速いんだぞ？

「これ、大人気ないぞ」

「す、すみません」

「これでわかったであろう。魔王はもっと強い。汝の願いはそれほど遠いものだ」

「知ってたの？」

「そのペンダント。時に汝のことが伝わってくる」

　そんなことがあったのか。

　個人情報というかプライバシーガン無視だけど。

「汝が望む世界は儂達も興味がある。だから強くなってもらう」

「それで、小手調べで何が分かったの？」

「汝に必要なもの、それは――」

「そ、それは？」

「瞬発力だ」

　瞬発力というと、瞬間的に作動する力だったっけ。

　てっきり魔法を教えてもらうかと思ったんだけど。

　俺も武闘派になるの？

「別にクーリアみたいに武闘を始めろというわけではない。魔術師でも必要なことは瞬間的な判断力、場合によっては魔法を使わずに避ける場面もあるだろう」

　例を挙げるならシャルちゃんとネルちゃんの時。

　あの時は避けれたものの、ギリギリの戦いだった。

　単純にあれより速い攻撃、魔法がくれば避けることも守ることもできない。

　クーリアさんの攻撃なんて百発百中で当たってしまう。

「汝に今必要なのは瞬発力。それは若いうちに付けといたほうがいいものだ。リーシュ、汝は抵抗の方法を儂が教えよう。ここからは個別の修行だ。ただし、飯の時間は一緒だ。これは守ってもらう」

「なんで？」

「飯を用意するのは弟子たち。食器を洗うのもそうだ」

「ってことは…」

「汝等もそうすることだ。飯をつくるのはクーリア達でよいが、洗うことだけでもやることだ」

　なんか、弟子らしいことあったわ。

　というか雑用じゃん！

　バイト時代を思い出すなあ。

「では後は頼んだぞ、クーリア」

「はっ！」

　ん？

　何か今クーリアさんニヤついていた？

　後ろからだからよく見えなかったけど。

　もし本当ならギャップがすごい。

「どうかしました？顔に何かついています？」

「いえ、なんでもないです…」

　やっぱり気のせいか。

　とてにも『笑っていましたか？』なんて聞ける雰囲気ではないし。

　というか一対一で話すと少し怖い。

　目力があるというのか、睨んでいるというのか。

　もしかしたら視力が悪くてこうなってるのかも。

　うーん、下手に突っ込まないほうが一番なのかな？

「ではさっそく始めましょう。せめて最初くらった攻撃ぐらい避けれるように頑張りましょう」

「はい！！」

　そこからは本当につらかった。

　今までの人生で武術をしたことがない。

　叩きつけられたり殴られたり。

　ケンカも全然しなかったから痛いのに慣れていない。

　何回か涙目にもなってたと思う。

　これから毎日続くのか。

「お昼を食べに行きましょう。ついて来てください」

「いてて…。分かりました」

◆クーリア・メアトラス

　どどどどうしよう！？

　師匠から新しい弟子が来るって言ってたけど私より若い子じゃない！

　今まで年上としか交流がない。

　年下の子となんて初めてだわ。

　最初あった時大丈夫だったかしら？

　不自然じゃなかったかしら？

　それにしても、なんてかわいい子なんだろう…。

　どうしても目で追ってしまう。

　目線でばれないかな？

　目が合ったら心臓が止まってしまいそう！

　……心臓が止まる？

　なんで？

　でもずっと見ていたい、一緒にいたい。

　あぁジルくん、なんでそんなにかわいいの！！