第35話 こいつ、ここまで来たのかよ!

「あと、少しで、この層は、終わり」

「あ、ほんとだ」


 何回か戦闘をしてマッピングは終わりかけていた。

 あと残ってるのは階段付近。


「階段にはボスがいるのか」

「違う。ボスと、見張り番は、ちがう」

「じゃあさっきと同じ?」

「それも、違う。見た目は、変わらないけど、強い」


 宝箱を守るのに弱い奴を置くことは少ない。

 そんな時は大体外れかトラップ。

 でもここは下に行くための階段。


「じゃあ誰が行く?」

「わっちたちが行くでありんす」

「この前より多いし強いけど、大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。しっかり今朝練習したから」


 ラウくんも自信満々。

 フウちゃんは最初は1人でなんでもやるような子だと思ってたけど違ったな。

 しっかり頼っているし引っ張ってもいる。

 これも才能だろう。


「ふっふっふっ。しっかり見ておくでありんすよ!」

「うん!じゃあ行くよ!」


石ノ礫グラベル!さらに石ノ礫グラベル!!」

火炎弾ファイアーバブル!!」


 おお!

 詠唱を使わずにもう使ってるのか!

 だからあんなにボロボロだったのか…。

 あれからずっと起きてやってたとしても朝の短い時間でもここまで成長するのはすごいと思う。

 なにせ俺は今までそんなに短期間で出来たことはそうそうない。

 あったとしても水の魔法ぐらいだし。


「すげえ…なんでマル笑顔なの?」

「あいつら、マルの、ごはん、奪ったから」

「そういえばさっき仕返しとか言ってたね」

「うん。ここでの、ごはんは、貴重。ずっと、恨んでた」

「…ちなみにどれぐらい?」

「半年ぐらい、前かな?」


 食べ物の恨みは恐ろしいな。

 まだ持ってるとしても腐ってるぞ。


「どうでありんしたか?」

「すごいよ…まさか1日で詠唱なしまでいくとは」

「すごく大変だったよ…。タイミングとかもあったし」

「普通出来ないよ…」

「わっちのおかげでありんす!」


 いい先生だね。

 スパルタとかを除いたら。


「次の層、行く?」

「「「「「いく!!」」」」」

「ここからは、マルも、そこまで、案内できない」

「危ないのー?」

「うん。たまに、ほかのボスも、散歩したり、してる」


 それボスなの?

 自由過ぎない?

 てっきり一番奥の部屋に鎮座してるかと思ってたんだけど。


*


「わー!この子はー?」

「よく、見つけたね」

「うん!すごく小さいけど」

「その子は、私への、連絡用スライム。何か、あったの?」


 普通に話してるけど小さいから全然見つからなかった。

 そりゃあ5ミリぐらいのがいても見つからないわ。

 しかも浮いているし。


「どうしたの?」

「―――」

「わかった。すぐいく」

「何かあったの?」

「新しいスライムが、誕生した」

「「「「「え!?」」」」」


 まさかの自体。

 というか新しいスライムってできるのか。

 現に目の前に見たことがないスライムがいるけど。


「みんなも、くる?」

「「「「「もちろん!!」」」」」

「じゃあ、いくよ。危ないかも、しれないから、絶対に、離れないでね」


*


 まだマッピングはしてないけど同じ層らしく目的地まで真っすぐ進んだ。

 本を見てみると曲がったりしてるみたい。

 よく覚えているな…。


「えっと、この子?」

「―――」

「わかった。みんな、この子が、新しいスライム、みたい?」

「こいつってあの時のだよな?」

「そうみたいだね」


 このスライムってたしかガウが倒そうとして倒せなかったスライムだ。

 薄い灰色で覚えていた。


「こんな風に持てるんだよー!」

「シロちゃん!いきなり、そんなこと、しちゃだめ!」

「ああー!!」


 シロがつかんでるとマルが奪い取った。

 それもそれで危ないけど。


「おかしい。普通なら、バラバラに、なるけど」

「おまけにこいつ硬いぞ」

「触った感じ、柔らかい、けど?うーん…」


 俺も思った。

 その時は気づかなかったけど柔らかくてかたいって。


「魔法を、使える?珍しいね」

「スライムって魔法は使わないの?」

「マルぐらい、かな?」

「さっきのちっちゃい奴も?」

「あれは、また別。あれは、魔法、なのかな?」

「―――」

「魔法みたい」


 マルも知らなかったのかい!

 スライムでも魔法を使うのか。

 マルや連絡用のスライムぐらいだけだけど。


「話せるの、かな?」

「??」

「―――」

「!!」

「―――」

「なるほど。わかった」

「こっちは全然わかんないけど…」


 というかしゃべってた?

 こっちからだとただただ無言が続いてたように見えたけど。

 聞こえない周波でも放ってるの?


「珍しいこと。ドラゴンの、排出物を、食べたみたい」

「うげぇ!?」

「どうしたのー?」

「…知らなくていいよ」


 汚い話だった。

 でもそんなもので変わるのか?


「スライムは、取り込むものを、吸収する。魔力も、同じ」

「っていうと…もしかして…」

「うん。簡単に言えば、この子は、ドラゴンスライム」


 強そうなスライムだった。

 こんなのがほったらかしにされてたのか?

 今はあっちは大丈夫なのだろうか。


「それと、この子は、君たちを、追いかけて、来たみたい」

「っていうことはドラゴンスライムはこいつだけってことかな?」

「たぶん。他に、見たことは、ないって」


 そんな危ないスライムがちらほらいたらやばすぎる。

 これでドラゴンの攻撃もできるってなったら危険すぎる。


「ほかにどんなことができるんだろう?」

「!!!」

「それってドラゴンの羽じゃん!すげえ!」

「本当だわ。私とジルが使えるやつとそっくり」

「リーシュちゃんも使えるのー?」

「ええ。ジルと一緒に…あっ」

「ふーん…」

「やってしまったわ…」


 何してるんだ?

 リーシュちゃんがドラゴンとか思ってるのか?

 というかドラゴンもいいけど天使の羽のほうもよかったけど。


「どうやら、硬くなることと、飛べること、だけみたい」

「それでも十分すげぇよ」

「つかめるのも、たぶん、普通の、スライムじゃ、なくなったから」


 そんなんで変わるのか。

 人間も何か加護を受けたら変わったりしないのかなあ。


「ジルと、リーシュ。2人も、人間じゃない」

「「「「「えええ!?!?」」」」」


 俺は人間だよ!

 もう1人は合ってるけど。


「語弊が、あった。加護が、あるから、ただの人間、じゃない」

「「ややこしいよ!!」」

「ごめん」


 心臓が飛び出るかと思ったよ…。


「この子は、マルが、面倒みる」

「それがいいと思うよ」

「倒さないのー?」

「珍しいから取って置かないと」


 希少価値は高いと思う。

 もしドラゴンの肉とか食べたらどうなるんだろう?

 ちょっと興味がわいてきたけどやることはないだろう。

 ドラゴンを倒すのに抵抗があるし。


「当分は、この狼か、ゴブリンがよく出る」

「ということは楽な時間が続くってことか」

「でも、気を抜かないで」


 この層はスライムがいるということで先に進んでいた。

 パッと見た限り上より少し広いぐらいなのかな。

 これは思った以上に時間がかかりそうだ。





攻略状況

 攻略済み:1~2層

 攻略途中:3層

 未攻略 :4層~

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