第27話 次!次いくよ!!

「みんなおはよー!」

「「「「「おはようございまーす!!」」」」」


 クロの件から3週間たった。

 あんなことがあっても元通りの生活に戻っていた。

 完璧に元通りとはいいがたいけど、ほとんど元通りだ。


*


 あの日の翌日。

 いつもとは少し違う朝を迎えた。

 違うところは一つ。


「くそねむい…」

「ん~」


 あの後、部屋に戻ったら泥のように眠った。

 けど寝れる時間はほとんどなかった。


「あさ~?」

「うん、朝だよ。準備しないと」


 徹夜したときを思い出すなあ。

 テスト前とかそうしていたし。


「ちょっといいかしら?」

「はーい!」


 誰かがドアをノックした。

 誰だろう?


「おはよう…」

「クロー!!」

「おはようシロ、それにジルも」

「うん」


 朝からどうしたんだろう?

 昨日のことでも引っ張ってるのだろうか?


「シロ、昨日はごめんね」

「???なにかあったっけー?」

「やっぱり覚えていないのね…分からないならいいわ」

「それよりクロー!髪結んでー!」

「私でいいの?ジルじゃなくて」

「うん!今日はクロがいい!」

「ほら、やってあげて」

「…うん!」


 やっぱり昨日のことをを引っ張っていたのか。

 水に流そうって言ったのに。


「よし!できたわ!」

「ジルどうー?」

「うん、可愛いよ」

「えへへっ」


 いつもとは違い、細かく結んでもらっている。

 俺だとそこまで器用にできない。


「クロ、2人はどう?」

「2人はラウくんとフウちゃんと一緒だわ」

「そうか…」

「…本当にありがとうね」

「それはもうおしまい!いつものクロのほうが好きだよ」

「え!?」

「…カプッ!」

「いてー!」


 また噛まれた!

 なんでなのー!!


「クロ、もしかしたらジルは危険かもしれない。近づいちゃダメ。」

「あははっ。そうかもね!」


 おいおい!

 どっちかと俺じゃなくてクロだろ!

 って言っても、シロは覚えていないか。

 それとこれはもう終わったことだし。


*


 それからはいつも通り。

 そのあと、リーシュちゃんたちと会ったけど全員覚えていなかった。

 それにしても記憶操作魔法って…。

 怖い魔法も存在するんだなぁ。

 あの時はいっぱいいっぱいで気づかなかった。


 それと記憶操作したときにリーシュちゃんに力を上手く使えないことも入れといたらしい。

 今後注意してほしいとのこと。

 それと原因を探すことを続けてほしいということ。


 とまあいろいろあったけど今はもう普段通り。

 クロもシャルちゃんもネルちゃんもいつも通りにしている。

 もはや何もなかったのではないかと思うぐらい。


*


「さて!いよいよダンジョンに行く日が近づいてきたわ!」

「今日はそのことについて説明するわ」

「「「「「はーい!!」」」」」


「まず今回行くダンジョンは初めての人でも攻略しやすい〔新天地のダンジョン〕。もしもの時のために私たちも一緒に行くわ」

「ちなみに1年生は全部攻略しないといけないよ!」

「も、もし出来なかったらどうなるんですか…?」

「心配しないでラウくん!しっかり2年生になれるよ!ただこのダンジョンを攻略しきるまで新しいダンジョンにいけないわよー?」


 留年というシステムはないのか。

 それはうれしい。

 さすがに小学校中学校にはなかったけどさ。

 高校の時赤点取らないように必死こいていたのが懐かしい。

 …留年はしてないよ?しっかり現役でいけたよ?


「どんなダンジョンでありんすか?」

「いい質問よ。新天地のダンジョンは前とは違っていろいろな敵がいるわ。その上、ダンジョンだからしっかり確認しながら進まないと迷子になるわ」


 ゲームと違って各自でマッピングしていかないといけない。

 やっぱそこは違うよなぁ。

 自動でやってくれたのは相当便利な機能だったようだな。


「ただ今回はお試しというわけで1層目だけだよ!」

「何層あるかはみんなで確認してほしいわ」

「みんなで行くんですか?」

「そりゃあもちろん!そのためのパーティだからね!」

「あ、いや。そういうわけじゃなくて、1年みんなで行くんですか?」

「ああ!そういうことね!」

「みんなバラバラよ。このダンジョンは面白いことに同じ場所にあるのに入り口が10個もあるの。私たちはその1番の入り口から入るわ」

「残念だけど他のパーティとは会えないよー」


 ということは中も仕切られているのか?

 ずいぶんハイスペックなダンジョンだな。

 もしかして3D迷路みたいな感じになっているのか?

 嫌いじゃないけど苦手だぞ、そういう頭が痛くなる系。


「まあまあ、ダンジョン中はお楽しみにしてて!ほかに質問はある?」

「いつ行っていいのー?」

「これからは午前中は授業で午後は訓練かダンジョンにしていくわ。ダンジョンに行くときは私たちどちらかがついていくわ。けど最初以外はダンジョンの中まではついていかないわ」

「緊急用として脱出できるアイテムもあるから安心してね!」


 そんなアイテムまであるのか。

 さすが魔法の世界だ。

 ほかにもいろいろとアイテムもありそうだし見てみたい。


 そういえばどうやって攻略したか判断するんだろう?

 ずーっとついてきてくれるわけじゃないし。


「どうやって攻略したか判断するんですか?」

「そうそう!行く前にみんなに一冊の本を渡すわ!ここにどういう地形だったのか書き残していってほしいの。これが攻略したか判断するわ!」

「そんなことできるんですか?」

「このダンジョンはずっと使われているの。だから書いたのと私たちが持っているのを比べればしっかり攻略したかわかるわ」


 なんか不正ができそうだな。

 誰かのをコピーすればいけそうだけど…。

 ということはなさそうだな。

 みんなキラキラした目しているしそんなことはしないだろう。


「でもダンジョンってどうやってできたんだろう?」

「おっ!ガウくん!いい疑問だよ!さすがね!」

「や、やったー…?」


 あまり褒められたとは感じていないみたい。

 喜び方も中途半端だし。


「実はね、ダンジョンは私が――」

「自然発生よ。今でもどこかで出来ているかもしれないわ」

「シルヴィ先生…」


 ボケ殺しのシルヴィ先生。

 しょぼんと同じ顔している。

 こっちのほうが面白かったかもしれないけど。


「自然発生なの?人工物っぽいけど」

「そうとしか言えないのよ。誰か作っているのではないかと言われていたけど誰も立ち入らないところにできたこともあってないってことになったわ」

「もしくはダンジョンをつくる魔法があるのではないのかって言われたりしているねー」

「まあ自然にできるって思っていいわ。頻度は低いけど」


 まるで雑草みたい。

 いつも歩いていた道に急にダンジョンができたりするのか?

 もうびっくりどころじゃないだろ。


「じゃあこの本を持っていてね!無くさないように気を付けるんだよー!」

「一応なくしても新しいのをあげるわ。今まで書いた分がなくなっちゃうけど」


 思ったより小さい本だった。

 本当に書くため用になっている。

 それに書き込むための鉛筆もある。

 手帳と思ったほうが早いかな。


「よし!ちょっと早いけどお昼にしようか!」

「午後はなにするのー?」

「いつも通りじゃない?」

「ふっふっふっ。シロちゃんクロちゃん、甘いわよ!」

「まあお楽しみにしといたほうがいいんじゃない?」

「そうね!お楽しみに!お昼食べに行こう!」

「「「「「えー!!」」」」」


 餌の待て状態。

 楽しみは最後まで取って置くって言葉あるじゃん?

 俺、無理なんで先に取っちゃいます。

 だから後々のほうがつらいんだけどね。


*


「それじゃあいただきまーす!」

「「「「「いただきまー…す?」」」」」


 え?なにこれ?

 いつもと違う。

 なんかうるおいがない。


「干し肉でありんすね」

「それとこれは硬いパンかな…」


 ありがとうフウちゃんとラウくん。

 俺も理解が追い付いてきたよ。


「なんで…これなの?」

「冒険だとこういうのしか食べられないからだよ!」

「いきなり食べても満足しないからね。慣らすためよ」

「あっ!でも意外とおいしー!」


 シロはのんきだな…。

 ああ、いつもの温かいご飯が恋しいよ…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る