第26話 決着
「シロちゃーん!!」
急いで声がした方に来た。
ドラゴンの声だからシロちゃんの可能性が高い。
別のドラゴンという可能性もあるにはある。
けど、まだこっちに来る前は2人をよく見ていた。
声も一緒だから可能性が非常に高い。
「シロちゃん!」
「ウグググッ…!」
シロちゃんと2人の悪魔がいる。
2人はドラゴンの足で押しつぶされかけていた。
「シロちゃん!落ち着いて!」
「ガアアアァァァ!!」
ジルくんは何を言っているのか分かっていたみたいだけど。
やっぱりあのペンダントのおかげだったみたい。
それよりジルくんは?
シロちゃんと一緒だと思ったんだけど。
「グルルルルル…」
「ジルくん!?」
シロちゃんが悲しそうな表情をして後ろを向いた。
そこにはジルくんが倒れている。
「ど、どうしたの!?ジルくん!」
「……」
反応は…しない。
…こういうときこそ落ち着くことが大切なんだ。
まずは現状を確認しないと。
何か短剣みたいなのが刺さった後があるわ。
けど抜かれたのか消えたのかそれが原因で出血が多い。
心臓はしっかり動いている。
「
これでは治らない。
傷が深すぎる。
それなら上の回復魔法を使えばいい。
「
何で!
切断された手足も繋ぎなおせるほど強い回復魔法なのよ?
一体なにが…。
「この黒い血みたいなのが原因なのかしら」
「ふふっ、簡単に直させるわけないよ!」
「ガアアアァァァァァ!!!」
「うぐっ!」
シロちゃんの下にいた悪魔が何か言っていたけど。
簡単に直させない?
人間がこんな血を流さないけど。
いつの間にこんなのが出てきたの?
何を使えばいいの…?
早くしないと!
だんだん焦りが出てくる。
「こ、これならどう?
少し黒い血が消えている!
これならこのよくわからないのを消せそうだわ!
「
これで消えた。
少なかったのがよかったけどこれが回復の邪魔をしていたのかしら?
「もう一度!
さっきとは違い、みるみるうちに傷がふさがっていく。
足りない血も足されていっている。
◆~ ジークシル・アウラティア ~◆
「うっ…」
「ジルくん!?」
「リーシュ…ちゃん?」
「よかった!!」
「うぇ!?」
なになに!?
いきなり抱き着かれたんだけど!!
「うぅ…えぐっ…」
「ちょー!なんで泣くの!?俺何かした!?!?」
『ジル~…』
「シロ!?なんでドラゴンに!?」
もしかしてあの世の世界?
でもぬくもりが…。
*
「これでよし!」
「ぐぬぬ!」
「全然外れない!」
あの後起きたことを教えてもらいつつ2人をどうしようか考えていた。
とりあえず拘束となった。
シロは食べるとか言い出したときは驚いたけど。
そんなことをさせないために人の姿に戻ってもらった。
「油断しているね」
「「「えっ?」」」
「2人ともお疲れ様。少し休んでてちょうだい」
「「すみません…」」
誰なの?
悪魔ってのは分かるけど。
「そんな馬鹿な…脱出したというの?」
「油断をしないようにって言ったはずよ」
「えっ、誰なの?」
「…クロちゃんよ」
全然違うじゃねぇか!
あ、でも面影は少しある。
あと身長ぐらい。
「やあジルくん」
「本当にクロなのか?」
「そうよ。…この状況では逃げれなさそうね」
「それなら、おとなしく捕まってくれると嬉しいけど」
「そんなことはしないわ。まだ、諦めていないからね」
視界が暗くなる。
再び見えるようになった時は別のところにいた。
*
「あつっ!ここは?」
「私たち悪魔の上位種だと1対1で戦うことがあるの。ここはそのための場所よ」
「決闘ということか?」
「そうよ。ここなら私にもまだ希望があるからね」
そういえば飛ばされたのは俺だけみたい。
リーシュちゃんとシロが見当たらない。
「さて、そろそろ始めようか」
「何を言っても、やめる気はないの?」
「ないわ。そうしないと、みんなの犠牲の意味がなくなるわ」
クロはそう覚悟したのか…。
なら俺も覚悟をしないとな。
何かはもう決まっている。
「絶対にみんなを、クロを助ける!」
「助ける?危機感が無いようね」
「と言っても私もギリギリなんだ。これで決めるよ。
「…
「ずいぶん小さい剣のようね」
「ああ。それでも俺の知っている最強の剣だよ。クロのもすごいね」
「ええ。悪魔でも知らない者がいない剣だわ」
クロはこの一撃で決めるつもりのようだ。
俺もこの一撃にすべてを!
「これで終わりよ!
当たったら木端微塵になりそうな魔法だな。
いや、名前通りだと吸収でもされるのか?
だが俺には当たらない。
「また元の生活に戻ろうよ。
今度は俺たちを白い光で包み込む。
*
「な…によ。これ…」
「俺が使える魔法で一番強い魔法だよ」
「反則だわ…こんなの…」
「ジル!?!?」
「ジルくん!?」
元の場所に戻ってきた。
魔法で創られた世界なのか?
とにかく戻ってきた。
「一体どうなってたの?」
「俺とクロで一騎打ちになったんだよ」
「よく勝ったわね…。そんなに強かったの?」
「実は加護だけだったら勝てなかったんですよ」
「え?」
魔法が使えるようにはなったものの俺ではあまり使いこなせられない。
ハイスペックのパソコンを手に入れても使う人が分からないと宝の持ち腐れだ。
俺は今そんな状況なんだけど。
「これのおかげだよ」
「…なにこれ?」
「それシロの歯じゃん!」
「そうだよ。これのおかげで助かったんだ」
「「???」」
「まあいいじゃん!助かったんだし!」
実はこれ、よくわからないけど魔力を込めると目の前にある魔法を消せる。
もしかしたらシロも使えるのかもしれない。
「クロ、なぜこんなことをしたのか教えてもらってもいいか?」
「…ええ」
話を聞いた。
俺の父さんがクロの仲間たちを倒したこと。
そして自分たちを犠牲にして守ってくれた仲間たちの復讐を。
何より驚いたのは作戦だ。
自分たちでは父さんにかなわないと思ったから別の戦力を考えたとのこと。
ドラゴンの卵がどういうのかは知っていたため、俺たちが持ってきた卵に目を付けたらしい。
「なるほどね。さて、クロ」
「……」
「そう警戒しないで。俺から提案が一つあるんだ」
「…なに?」
「この件を水に流してまた学校での生活をしないか?」
「「「「はぁ!?!?」」」」
「ちょっとジルくん!この人達は私たちを殺そうとしていたのよ?」
「分かっているよ。クロ、仲間たちがクロを逃がしてくれたんだよね?」
「そうよ!だから復讐を!」
「なら、生きようよ。みんなのために。守りたかったのはクロたちなんだろ?それなら最後まで生きようよ。危険なことをしてまで復讐をしないでさ」
「……」
「ぼくたちは…」
「ウチたちは…最後までついていくよ」
「2人とも…」
*
「終わったみたいだね」
「校長先生!?」
「知っているの?」
「私が来た時わがままを聞いてくれたのよ」
「そうだよ。でも今は時間がない。
バタバタとリーシュちゃんとシロが眠った。
「何をするんですか!」
「今は時間がないからそれは終わってから説明するよ。それよりも君たちに聞きたいことがあるんだ」
「私たちですか…?」
「そうそう。さっきこの子の提案受け入れるのか受け入れないのか」
「…受け入れるわ。こんなことまでしたのに水に流すとまで言ってくれたからね」
「うん!私としてもうれしいよ。実はそうなると思って先に行動していたからね」
「どういう意味ですか?」
「さっきドラゴンの鳴き声が聞こえたとき学校はパニック状態になったんだ。申し訳ないけど立場上みんなを優先させてもらったよ。ただドラゴンが来たってことはまずいことなんだ。みんなの記憶をいじっていたら今になったんだよ」
「な、なるほど」
「そういえばラウくん!」
「ああ、大丈夫だよ。記憶もいじらせてもらったから今日のことは覚えていないよ。今は部屋で寝ている。もちろんフウリンちゃんもね」
よかった!
いつの間にかいないと思ったら隙を見て助けていたのか。
でもやっぱり手伝ってほしかったなぁ。
「ただ君たちの記憶はそのままにさせてもらうよ。しっかり償ってもらわないと」
「「「はい…」」」
「ただ規制はかけさせてもらう。
「何をしたんですか?」
「悪魔化はされたら困るからね。私の監視内ではできないようにしたんだ」
*
「3人とも。明日はいつも通りの日として過ごすんだ。わかった?」
「「「ええ」」」
「よし!じゃあ先に戻ってもらえるかな?この子と話したいことがあるからさ」
「わかったわ。ジル」
「どうした?」
「…ありがとう」
「…ああ」
クロも落ち着いていた。
よかった。
いつも通りの日に戻れる。
「さて、話だけど――」
「あの!お願いがあるんですけど!」
「ん?ああ、なにかな?こんなことをさせちゃったからある程度聞くよ」
「できればシロにも記憶操作をしてあげてほしいんです」
「いいのかい?」
「ええ。シロにはつらい思いをさせちゃったみたいですし」
それに最後までシャルちゃんとネルちゃんを恨んでいたみたいだし。
そんな中じゃ元通りに近づけない。
「よし、これで大丈夫。じゃあ私の話だけど」
「…はい」
シロがドラゴンって言うことか?
隠していたからなあ。
何を言われるんだろう。
「シロちゃんがドラゴンだったってことは知っていたよ。別の話」
「え?」
何で知っているの?
いや、不思議じゃないかもしれない。
強い人はそういうのを見破る方法があるのかも。
「まあ、まずはこれを見て」
「!?その羽って!」
「リーシュと同じだよ」
きれいな羽。
天使の羽だ。
ってことは校長先生も?
「本当の名前はカルシュ・ラリベット。今は校長としてラルベリー・カラトルクって名前だけど。リーシュに仕事を押し付けられたけど別の人に押し付けた神様だよ」
仕事のたらい回し。
もしかしたらブラック企業なんじゃないのか?
「どうやらリーシュは言ってないようだけどリーシュと一緒にいるなら知っといてほしいことがあるんだ」
「なにをですか?」
「この世界では異変が起きている。今日知ったことだけど、その影響で私たち神は本来の力を使えなくなっている。いつでもリーシュに頼れるってわけじゃなくなってしまったことを」
「もしかして危険になることも…?」
「ええ。もちろんあるよ」
「なら帰ったほうが!」
「残念だけどそれもできない。それも使えなくなっているんだ。と言っても他に比べれば相当強い。そこまで深く考えなくてもいい」
「っと、そろそろ部屋に戻ったほうがいいよ。休む時間がほとんどなくなってしまう」
「でも2人が」
「シロちゃんは君に運んでもらいたい。リーシュは私が運んでいくから」
「わかりました」
「それじゃあおやすみ」
「おやすみなさい」
こうして俺たちに起こった事件が終わった。
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