第20話 これってもしかして...

「明日からは話した通り一緒に授業と訓練をするわ」

「期間はまず1か月間!そのあとに冒険に行くわよ!」

「午前中は授業、午後は訓練よ」


 冒険への準備ってことかな。


「一緒にやる理由を聞きたいでありんす」

「いい質問よ!たしかに人が増えて大変に見えるけど」

「パーティを組むに至って、連結力、団結力が必要になっていく」


 そのために1か月間一緒に練習をして仲を深める。

 これはゲームだとなかなかできないことかな。

 オンラインだと変わったりするけど。

 俺はやったことないからなあ。


「ふむ…。わかったでありんす」


 思っていたよりすんなり受け入れたな。

 負けたからしっかりやろうとしているのか?


「この期間中にぜっっったい!そちを越してみせるでありんすよ!」

「ちょっ!フウちゃん!まだ食事中!」

「おっと…」


 まだ諦めていなかったのか。

 後ろから刺されないように気を付けよう。


*


「おいしかったねー!」

「そうだなー。またたくさん食べていたね」

「おいしいもん!」


 夕食後はいつも通りの解散。

 俺たち2人は部屋に戻ろうとしていた。


「ねぇねぇジルー」

「どうした?」

「ちょっと、元の姿になりたい、かなぁって」


 なんでそんなもじもじして言うんだ?

 まあ構わないけど。


「いいよ、戻ったらすぐ行く?」

「うん!」


*


「到着!」

「わーい!」

「あっ!おい!」


 着くなりいきなり走り出した。

 そこまで気に行ったのかな。


「ジルー!見てて―!」

「ん?」

「へ~ん、しん!」


 ボンッ!という音と共にドラゴンの姿に戻る。

 いつ見ても綺麗な色だよなぁ。


「あれ?大きくなった?」

『うん!大きくなったよ!』

「へぇー!やっぱりな!」


 …あれ?

 今ドラゴンの姿だよね?


「ちょっとシロ、何か言ってみて」

『ジルー!』

「やっぱ聞こえるな」


 というか聞けるなら人の姿にしなくてもよかったんじゃない?

 って思ったけど人の姿になれたから一緒に学校へ行けているんだ。


(リーシュちゃん!俺、ドラゴンが何を言っているか分かるようになったよ!)

(…何を言っているの?寝ぼけてはいない?)

(バッチリ起きてますよ!そういう魔法があるなら教えてくださいよー)

(え、ええ。おかしいわね?)


 歯切れが悪いな。


(もしかしたらラグドラーグさんの加護、いや、たぶんジルくんが付けているものかしら)

(これが?)

(おそらくね。私は用があるから切るわね。おやすみ)

(おやすみなさい)


 ただの高いペンダントかと思ったけどそんな効果があったのか。

 常につけていてよかった。


『ジル―、シロの声聞こえるの?』

「うん、聞こえるよ。このペンダントのおかげだってさ」

『…リーシュちゃんの』

「だから違うって!もう、この際だから話すよ」


 俺はゴブリンを探しているときのことを話した。

 シロはドラゴンの姿なのにちょこんと座っていて面白かった。


『へぇー!シロも会ってみたかったなぁ』

「そうだね。俺もまた会いたいなぁ」


 まだ会って時間は経っていないけど。

 ドラゴン好きだからたくさん見ていたい。


*


 こっちに来てから30分弱。

 少し大きくなったのがうれしいのか割と暴れている。


『ジル―!』

「どうしたー?なにか見つけたのか?」

『そう!なんか見つけた!』


 冗談で言ったつもりなんだけど。

 何か珍しい石でも見つけたのか?

 かわいらしいことをするねぇ。


『この卵なんだけど』

「おぅ…」


 かわいらしいこと、ではなさそう。

 卵って…。

 あんなに暴れていたのによく割れなかったな。


「よく割らなかったね」

『なんか硬くて割れなかったよー』


 試したんかーい!

 さすがドラゴン。

 怖いところはしっかりあるな。

 たぶん好奇心旺盛なだけだと思うけど。


「これ、ドラゴンの卵じゃないかな?」

『よくわかったね!ジルって物知りー!』

「いや、シロの卵と似ているからね」


 そもそもこんな大きい卵はそうそうないでしょ。

 ほかに出るとしたら何がいるのかも気になるけど。


『持って帰りたーい!』

「うん、そうしようか。ここに置きっぱなしってのも心配だし」


「じゃあ戻ってね」

『ん~!』

「ポンッ!」


 なんかのマジックみたいな演出だな。


*


「とりあえず、先生とかに見つからないようにしようか」

「みんなにもないしょー?」

「とりあえずね」


 正直言うと生まれてくるのがなにか気になるから。

 先生に見つかったら没収されちゃいそうだし。


「ふぁ~」

「そろそろ寝ようか」

「うん~、おやすみ~」

「おやすみ」


*


「…シロ」

「…なに?」

「何をしているの?」


 朝目覚めた時、シロが何かしていた。

 まさかと思うけど。


「卵しらない?」

「し、知らない!」


 昨日持って帰った後、木の箱の中に藁を入れて温めておいた。

 そこにあるはずの卵がない。


「かぶってる毛布どけてみて?」

「やだ!」

「いいから!」

「やだ!ジルのえっち!」


 えっちって…。

 やましい気持ちはないのに。


「はぁ、授業中は温められないから箱に入れること。寝るときは温めていいから」

「約束だよ!」


 はい、持っているの見えました。

 実に簡単だった。


「ほら、用意するよ」

「はーい!」


*


「シロ、何か嬉しそうね」

「うん!でもクロには言えないの!」

「なんだろうなー?」


 自ら怪しまれに行くスタイル。

 俺のほうがハラハラする。


「シロ、なるべく話を持ち出すのもダメ!」

「わかった!」

「何をしているのでありんす?」

「「わっ!?」」

「いきなり大きな声を出さないでほしいでありんすよ!」


 いきなり後ろから声をかけられてびっくりしたわ!

 心臓に悪い…。


「な、なんでもないよ!」

「そうそう!なんでもない!」

「…なにかあったみたいでありんすねぇ」


 バカなっ!

 ばれただとっ!

 完璧な演技なはずだったのに!


「それはそうと授業の準備をするんでありんすよ。今日は誰かさんが使った魔法の復習をやると聞いたでありんす」

「その誰かさんって?」

「わっち辱めた者」

「俺じゃなさそうだな」

「…鬼火」

「あちぃー!」


 あつい!

 何これ!?

 小さいけど腕に焼け跡が付いたんだけど!


 どうやら俺だったらしい。

 言い方よ…。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 続きは1時間後の10時にあがります。

 少々おまちを。

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