第18話 狐っ子っていいよね

「とまあ人に向かっていきなりやるのは危ないからこれよ!」

「…なにこれ?」

「これは雷光石らいこうせき!こうやって雷の魔法を使うと…」

「光ったー!」

「こんな風に光る!でも強すぎると…」

「まぶしー!」

「光り過ぎちゃうの!」


 それで調整をするのか。

 これは初めてだから練習しがいがあるかも。


*


「「全然できねぇ…」」

「まぶしっー!」

「全然光らないわ…」


 何回もやってもできる気配がない。

 俺とガウとクロはまず光りもしない。

 シロは逆にずーっとまぶしいまま。


「リーシュちゃんは?」

「私を誰だと思っているの?」

「あ、やっぱり」

「少しは驚いていいじゃない!」


 だって神様だからなあ。

 わかってて聞いたもんだし。


「リーシュちゃんはこの魔法の素質があったのかしらね」

「素質?」

「そうよ!例えばリーシュちゃんのお母さんかお父さんが雷の魔法を使えたらこどものリーシュちゃんも得意になりやすいってことよ!」


 身長の遺伝みたいな感じか。

 そうなると父さんか母さんが水の魔法を使うってこと?

 一回も聞いたことなかった。


「たぶんジルくんはお父さんの魔法を受け継いだのね」

「父さんを知っているの?」

「ノスタルさんでしょ?私たち冒険者でも有名よ!」


 へぇ!意外だな。

 家族といる間はそういう話はあまりしなかったし。


「どのくらいすごいの?」

「サラヴィリア国王、国の一番偉い人を守りながらもジルくんたち子供たち、それにおじいちゃんやおばあちゃんを守っていくために戦っているのを軍というの。冒険者を攻撃とすると軍は守りね。ノスタルさんはその軍で隊長なの!」

「それって強いの?」


 あまり強いって感じはしないけど。

 威厳はあるように見えるけどね。

 子供と一緒にいると普通のお父さんだし。


「私が全力を出し切っても倒せないわ」


 過剰評価とかではないな。

 いつもなら元気に言うけど少ししょんぼりしている。

 才能の差とかが出たりすると凹む。

 俺も嫌なほど味わったことだ。


「軍には十星という人たちが隊長になるの。言葉通り合計で10人。誰も強いわ」

「父さんはそのうちの一人…」

「そう。水星のノスタル。そういえばだれでも通じるわよ」


 通り名もあるのか。

 家では見事に触れないようにしていたな。

 親ってなんだかんだで隠し事が上手。


*


「とまあ別の話になっちゃったけど、リーシュちゃんはできちゃったのかあ…」

「もしかして簡単な魔法なの?」

「心配しないでクロちゃん!これだけにしか見えないけど立派な魔法なの。1週間ぐらいはかかると思っているから大丈夫よ!」


 その1週間をなくした神様。

 少し空気を読めないのかもしれない。


「とりあえず午前中はがんばりましょう!午後からはちょっと予定があるから!」

「予定?」

「お楽しみに!」


 なんか用意でもしているのかな?

 楽しみにしておこう。


*


「けっきょく…」

「「「「できなーい!!!!」」」」

「大丈夫よ!まだまだこれからこれから!」


 まさかの進歩ゼロ!

 これは厳しいなぁ…。


(なんで今回できないの?)

(できるにはできるはずなんだけど。おかしいわね?)


 なんでだろう?

 俺の調子が悪いからとかかな。

 昨日の疲れが原因でもありそうだし。


(もしかしたらさっきの電撃で助けてくれた時に調子が狂ったのかな?)

(たしかに麻痺じゃなくて電撃だったわね…。たしかにそれ、とは言い切れないけどそうかもしれないわ)


 シロの呪いか…。

 さすがドラゴン。

 やる規模が違うね。


「お昼を食べに行きましょうか!そのあとにみんなに会ってほしい人たちがいるのよ!」

「だれー?」

「まだ秘密よ!」


 お楽しみは人と会うことか。


*


「この部屋よ!」

「誰がいるんだろうね!」

「たのしみー!」

「あれ?この部屋って?」


 ん?なんかガウだけ違う反応している。

 どうせ何かあって来たことでもあるんだろう。

 それより早く誰かいるか会ってみたい。


「こんにちわー!」

「ユリア先生。早かったわね」

「ええ!みんな楽しみにしていて昼ごはんを早く食べちゃったからね。だめだった?」

「全然大丈夫よ。私の班もそうだったから」


「こちらはシルヴィ・スランド先生よ!」

「よろしくねみんな。シルヴィ先生って呼んでくれると嬉しいわ」

「「「「「よろしくおねがいします!シルヴィ先生!!」」」」」


 元気いっぱいのユリ先生とは違いおとなしい先生。

 ちょっとキリっとしていて少しとっかかり辛い。


「なにやらさわがしいでありんすねぇ」

「フウちゃん!ちょ、ちょっとそんな言い方はだめだよ!」

「そちもじゃ!男ならしゃんとするでありんす!」

「いたっ!やめてフウちゃん!」


 この声、聞いたことあるぞ。

 たしかすごいモフモフしたくなったような…。


「やっぱりラウじゃねえか!」

「ガウ!?どうしてここに?というと合わせる人達って…」

「そうよ!私たち班よ!」

「みんな席についてちょうだい。今後の予定について話すわ」


*


「私、ユリア班と!」

「私、シルヴィ班はこれから共に勉強や戦闘練習をしたりするわ」


 おぉ!

 なんか学校っぽいことをするね。

 そういえば学校だったわ。


「嫌でありんす!」

「こら!フウちゃん!またわがまま言わない!」

「嫌なものは嫌でありんす!」


 さっきから大きい態度だけど…。

 誰だこの子は?


「そうだわ。初めて会ったのだし自己紹介から始めようかしら」

「そうね!じゃあ私の班から!」


 俺たちから自己紹介が始まった。

 何を話すとかがないから名前とひとことだけ。

 一通り終わった。

 次はシルヴィ先生の班だけど。


「わっちはフウリン。この通り狐の獣人じゃ」


 耳としっぽは隠していたらしくぴょこっと出てきた。


「かわいいー!」

「なっなんじゃそちは!ちこうよるではない!」


 シロ、興味を持つとすぐ行動をする。

 すぐ行動に移すことは素晴らしいことだけど今それはやっちゃだめ。


「僕はラウ・ドルシー。そこにいるガウくんと同じ部屋です…」


 すごい内気だなあ。

 前会ったときはそこまで内気じゃなかったけど。

 そこにいるフウちゃんのせいかな?


「ぼくはシャル・ラルカン!」

「うちはネル・ラルカン!」

「見ての通り双子だよ!」

「よろしくね!」


 元気な双子の女の子。

 シロが分身したみたい。


*


「それじゃあこれからの予定だけど一か月後にまた冒険に行くわ」

「「「「「おおぉー!!」」」」」

「そ・れ・に!前よりとは全然違うわ!近くにはダンジョンがあるからそこに潜るのよ!」

「「「「「やったー!!!」」」」」


 ダンジョンはもちろん存在する。

 まさか冒険者になる前に潜れるとは!


「と言っても何回も使われているダンジョンだからどういうのがあるのかわかっているわ」

「私たちも何回もいったからねー!」


 私たちってことは先生二人は同じ班だったのか。

 性格は全然違うけど通りで仲がよさそうなわけだ。


「それにいたってみんなにはもっと強くなってもらうわ」

「でもなんで共闘を?わっちたちだけではなく…」

「難易度、危険が増えるからよ。そのために班ではなくパーティを組むことになったの」

「前回のはどの班とどの班を一緒にしようかのテストみたいなものなのよ!」


 だからみんなを一回ずつ相手させたのか。

 しっかりと先生としてやっていたのね。


「全体の結果としてはユリア先生――」

「ユリ先生でいいわよ?」

「…ユリ先生の班が1位、私たちの班が2位だったわ」

「「「「「やったー!」」」」」

「そんなっ!嘘でありんす!」


 まさか俺たちの班が一番優秀。

 それもそうか。

 何せ神様とドラゴン、それに神様とドラゴンから加護をもらっているやつもいるんだから。

 むしろそれについていけるガウとクロがすごいと思う。


「認めない!認めないでありんす!」

「うるさいわよ。フウちゃん」

「先生!わっちとこいつと勝負させてくれまし!」

「えっ!?」

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