第9話 俺は無事に教えられるのか?

「コツはそうね、真っ暗な場所にいる自分を想像して」

「ジルとおな――ムグッ!」

「シーッ。先生のを聞いてみようよ」

「わかった!」


 おぶねー!

 そうなったら俺が教えないといけないかもしれないじゃないか。

 ガウには苦労してほしいからな。


「だ、大丈夫かしら?」

「大丈夫です!続きをお願いします!」

「え、ええ。それならいいわ」


「例えば真っ暗な部屋とか洞窟とかね。そういう時は明かりがほしくなるでしょ?」

「うん」

「その明かりを自分の指先から出す!って感じよ」


 同じだった。

 まあ教えづらいし。

 シロもこんなもんでできたし大丈夫でしょ。


「くっー!」

「その調子よ!頑張って!」


 シロやクロみたいにうまくはいかなかった。

 俺はリーシュさんからの恩恵で元々練習してたし。

 シロはドラゴンだからなあ。

 元々魔法は得意なんだろう。


 それよりクロだな。

 まさかあんなに早くできるとは。


「クロってもしかして元々できてたの?」

「いや?どっちかというと明るい魔法じゃなくて暗い魔法だし」

「そういえばそっか」


 たしか影だっけ?

 一回も見たこともないし使ったこともないな。


「今度見せてくれる?」

「いいわよ!ジルの魔法も見せてもらったしね!」


 新しい魔法はいつでもワクワクする。

 そのためにレベル上げとかよくやっていた。


「ガウくん、焦らなくてもいいわよ!私もなかなかできなかったわ」

「そうなんですか?」

「ええ!簡単に見えるけど難しいのよ。魔法はよく使われるけどね」


 そう!

 魔法は使えるまでが本当に難しい!


 例えばだけど数学を思い浮かんでほしい。

 歴史や現代社会と違って覚えることは少ないでしょ?

 それと似ている。


 公式は覚えてもなかなか解けないときがある。

 つまり数をこなさないとできない。

 こっちの世界でも勉強が基本なんだ。


 でもそんなのは関係ない!

 なにせリーシュさんからのギフトがあるからね!

 魔法なんてどれでも使える!

 まあこれも調整になれないといけないけどね。


「先生でも2日かかったわ。他の3人がちょっとね?」


 それじゃあ語弊がない?

 傷ついちゃうよ。


「ムムム、いきなり凹んじゃうなー」

「安心して!みんな一緒にやっていくから!それにシロちゃんとクロちゃんも少しだけだからまだ追い越せるチャンスはあるわよ!」

「ちょっとやる気出てきた!」


「ジルくん。ちょっとシロちゃんとクロちゃんにもっと光るコツを教えて上げれる?」

「いいですよ」

「助かるわ!それじゃあガウくん、やってみようか」

「はい!」


 先生はガウにつきっきりか。

 正直、羨ましい。

 俺も綺麗なお姉さんに個人指導されたい。


「ジル!また違う目してる!」

「ええぇ?」

「その目、嫌な予感する!」


 怖いわ!

 頑張ってポーカーフェイスしてたんだけど。


(そうよ。いろいろな子にその見方はいけないわ)

(ええぇ…)


 最近リーシュさんからくるなあ。

 なんかもう周りに敵がいないみたい。


「まあまあシロ落ち着いて」

「ムー。わかったー…」


 助かったクロ!

 このままじゃ俺が居づらかったよ。


*


「えーっと二人とも、もう1回使ってみてもらえる?」

「「わかった!」」


 2人とももう一度使ってみた。


「なんかペンライトみたいだな」

「ぺんらいと?」

「なにそれー?」


 あ、こっちの世界だとないわ。

 あっても鉛筆ぐらいだし。


「気にしないで気にしないで。そうだな、まずは」


 そう教えたらいいんだろう?

 正直俺もわからん。

 俺は元々明るくできていたのを小さくしていた。

 手順というかすべて逆。


「いいのがあった!火ってどうやったら大きくなると思う?」

「「木!!」」

「そうそう。それと同じで光を大きくするためにはどうすればいいと思う?」

「「気合い!」」


 うーん!違う!

 それじゃあ脳筋すぎる!


「魔法ってそもそもどうやって使えると思う?」

「授業でそういうのを習うんじゃないの?」

「わかんなーい!」


 そういえばそっか。

 俺は本で知っていたんだった。


「うーん、違う教え方にしないとなあ」

「「???」」


 あー、教えるって難しいなあ。

 俺って絶対教師に向いてないわ。


「そうそう!その調子よ!」

「へへっ!どんなもんだい!」


 おお!

 いつの間にかガウもできている!


「シロちゃんとクロちゃんはどうかしら?」

「「全然すすんでなーい!」」

「あらら」


 すみません!

 せっかく頼ってもらったのにできなかった!


「そうね、後はみんな一緒にやろうか!」


*


「さて、明かりを大きくする方法は大きく二つ!」

「「「「それは…」」」」

「一つ目は…。」

「「「「……」」」」

「気合いよ!」

「「あってるじゃん!」」

「嘘だろ!?」


 嘘だろ嘘だろ?

 そんな馬鹿な…。

 まさかユリ先生も脳筋…?


「もう一つはたくさん使ってみることよ。こっちのほうが確実かしら?」

「気合いだとできないかもしれないのー?」

「出来ないことはないけど、何かつかまないとできないわ」


 まあそうだね。

 何かがふっときてできる人もいるにはいる。

 けどその場合はほとんど奇跡だもんね。


「まあ何も今日一日で出来なくてもいいわ!時間はまだまだあるのだからね!」

「「「「はい!」」」」

「それじゃあ今度は魔法について知りましょうか!」


*


「魔法はみんな普段使っているわよね?」

「よく使う!」

「火をおこしたりね」


 こっちの世界だとガスコンロなんてないしガス管もない。

 もちろん電気もない。

 風呂はあるにはあるけどそんな便利なものではない。

 五右衛門風呂と言ったほうが早いかな。


「そうそう!みんな料理をするときや人によっては掃除するときも魔法を使うわ!じゃあその魔法はどうやって使っていると思う?」

「「「う~ん??」」」


 みんな悩んでるな。

 残念だけど俺は予習済みだ!

 これを前の世界で習慣づけていたらなあ。


「みんな考えたことなかったでしょ?」

「そんなことなかったわ!」

「オレも!使ったらかっこいいと思ってたぐらいだし」

「シロもー!」


 まあそうだよな。

 数式みてもどうやってこうなったか知りたいと思う?

 まあ俺は知りたい方だけど。


「じゃあみんなは魔法をたくさん使ったら疲れたことはない?」

「ない!」

「シロはないの?」

「ないよ!いつも元気!」

「あらあら、じゃあ魔力がたくさんあるのかしら」


「まりょくってなにー?」

「魔力は魔法を使うためのものよ」

「それがないと魔法が使えないの?」

「そうよ!とても大切なことなんで覚えてね!」


 そう!この魔力が大切!

 人間の体力や命をHP。

 魔力を言うとしたらMPだ。

 まあそのまんまだけど。


「この魔力が多いとたくさん魔法が使えるのよ!」

「先生は多いの?」

「もちろん!たーくさんあるからいっぱい光れるわよ!」

「「「「まぶしぃ!」」」」


 うわっ!

 また光った!

 本当にこれ大きすぎると目に悪いな。


「ごめんごめん!時間も時間だし休憩にしましょうか!」


 なんだかんだでもうお昼。

 お腹空いてくるわな。

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