最後の5分間
一ノ元健茶樓
ラストフューチャー
私は、今、世界の滅亡を目の当たりにしている。
人は滅び、そして、このまま絶滅するだろうか?
だからこそ私は、今、こうして筆を取り、書こうとしている。
この世の終わりの全てを ―
Fin.
彼は、ただのサラリーマン。
趣味で書いている小説を、投稿サイトへとアップする日々。
歳は30、安月給に、彼女無し、家は狭いし、掃除はたまに。楽しみは小説を書く事と、アニメやゲームをする事。
俗に言う、ヲタクだ。
まぁ、それは良い。
彼はそんな生活も悪くは思って居ない様子だ。
しかし世界は、彼を許さなかった。
滅びが来たのである。
許されなかったのは、彼だけでは無く全人類らしい。
テレビには宇宙が移り、そこに地球と巨大な隕石が映っている。
あれが、地球にぶつかるらしい。
テレビの右上には、隕石衝突までのカウントダウンが表示されている。
あと5分だ。
いや、もうこうしてる間に5分も消えていく。
彼は、昨夜から寝ていないし食事もしていない。コーヒーは、沢山飲んでいた。
彼は、15分前になった辺りから、キッチンへ行き湯を沸かした。
彼は、10分前にインスタントうどんに湯を入れて蓋をした。
5分前つい先程それは、出来上がり彼は今、テレビも見ないで一心不乱に食している。
熱い。舌が火傷しそうだ。
しかし彼は、食べるのを止めない。
これが最後の食事になるかも知れない。
そして昨日より何も食べて無かったので、非常に美味しく感じる。
十分だ。最後の食事は。これで。
熱い汁が絡んだ、熱い麺を一心不乱に吸い上げ、噛んで、喉に流し込む。
季節は、夏。
8月。日本の夏は、最近暑い気がしてたんだ。
異常気象も自然災害も多かった。
もうすぐ、この日が来るんだと思って居たけど、まさか今日だったとは。
この隕石は、ずっと前から天文台で観測されていた。
本来ならば地球の横を通り過ぎる筈だった。
しかし。
昨日になって急に進路が変わり、地球にぶつかると言うのだ。
外は、大変な騒ぎとなっている。
けれど彼は、外には出なかった。
出ようとも思わなかった。
部屋を締め切り鍵をかけ、カーテンをしてエアコンをつけ、環境を快適にする。
そして昨日から一睡もせず、先程、自身の小説を最後まで書いてサイトに投稿した。
そして、うどんを食べて満足している。
髪はボサボサ、顔にはクマが、目は眠さで虚ろ。
カップうどんの残りが、汁だけになった時、顔を上げてテレビを見ると残りが2分になっていた。
彼は熱かったが、汁を全部飲み干した。
そして氷の入った水を一気に飲む。
お腹に悪そうだな…と思いながらも。
そして少し考える。
まさか書いていた小説の終わりと、今が繋がるなんてな。正直、スランプだった。
もしこの地球に隕石がぶつかりそうになったら、人はどうするのか?という小説を書いていたのだが、ネタがどれもしっくり来なかった。
半ば、諦めていた小説の最後を世界は示した。
彼は、神様になった様な錯覚にすらなる。最後までラストを書かない事にした。
― そして
最後の5分間 一ノ元健茶樓 @earthgarun
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