恋の愛し方

夢見アリス

第1話恋が好きな私の場合

 あ、この人好きだなと思うことがある。でもそれは叶わない。いや叶えてしまってはいけないことをしっている。なぜなら、その人は別の誰かを好きだからだ。こうやって私は勝手に失恋を繰り返していくのだ。


 九条美矢は、16年間生きてきて誰かと付き合ったことがなかった。それは好きになれないのではなく、好きになるタイミングが悪いとしか言いようがないのだ、と幼馴染の高峰楓は思う。

 小学生の頃も中学生の頃も、そして高校になった今でもこうして目の前でうつむいているわけだが。

 「はー、どうしてこうもうまくいかないもんかね」、と私はうなだれていた。高校2年にもなってさすがにまずいと思い、高校中の男子を見回した結果一人の男子に恋をしたのだ。しかし時すでに遅し、彼は別の女子と(しかも別の高校!)付き合っていたのだ。

 「もうたかみーでいいから私と付き合って!」と投げやりなことに高峰はそっけなくはいはい、と手を振るだけであった。


 放課後、高峰も部活でいなくなり私は図書室でなんとなく本を読んでいた。強打された宿題は特別難しくなかったので早めに終わらせついでに、と思い本を何冊か読んでいたのだ。その中に出てくる女の子は大抵初恋が実り、めでたしめでたしとなる。

 だが現実はそうもいかない。何もしなければ何も起きないのだ。ため息を一つ付き本をすべて返し終わり廊下に出たとき自分の教室に明かりがついているのが見えた。

あれ、まだだれかいるのかと思ったとき、クラスの女子と私が好きだった男の子がキスしているのが見えた。

 私のその時の気持ちをどう表現すればよいかわからない。ただその時の女の子のふにゃっとした顔も男の子の緩んだ笑顔も好きだった。思わず恋に落ちそうになった。


 私は昔から知っていた。自分の性格の扱いづらさを。私は恋してる人が好きなのだ。その人が好きなわけでなくその過程が好きなのだ。誰かに恋して誰かを好きになったとき人は悩み考え行動する。それが達成されずともそのときの輝きに私は恋をしていた。まともじゃないことも理解しているしこの恋は叶わないことも知っている。

 けれど私はまた恋をするだろう。輝きに魅せられた彼や彼女たちに恋をするのだ。

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