いちばん最後に

さち

第1話 いちばん始めに

 携帯を目の前にして、どれ程時間が経ったのだろう。

もうすぐ、キミの誕生日。大切な日。

まだ、その時間までに少しあるが、メッセージを送ろうか、直接電話で伝えようか。悩みに悩んでいる。

 キミの事だから、0時丁度には、きっと、まだ、起きているのだろう。

しかし、仮に寝ていたとして、この電話で起こしてしまうのは申し訳無い。


 悩んでいる。と言ったが、本当は、答えが決まっているような気がするんだ。

 直接伝えれば、喜んでくれるであろうあなたの声が聞ける。たとえ、寝ていたとして、機嫌を損ねて怒られても、呆れられたとしても。聞きたいんだ。キミの声を。

 いちばんに。

ほらね、答えは決まっているんだ。





 メッセージの着信音がする。

「・・・。」

やってしまった。

携帯の画面には0時15分。

友達がキミへ、メッセージを送りあってる。一番始めに送れなかった。

頬が、首が、痛い。うわ、涎垂れてる。

ティッシュで口元を拭きながら送信ボタンを押す。悔しいけど。


 すぐに返事が帰ってきた。

ちゃんと一人一人に「ありがとう!」と返事をするのは、実にキミらしい。

 会話もそこそこに切り上がり、「おやすみ」の文字が送られてくる。引き留める訳にもいかないし、自分もおやすみと送り返す。


 いちばんになれなかった。



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