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 終電が完全になくなった頃、小さくなってしまった氷が軽い音を鳴らしてグラスの中を踊った。

「あのね」

「ん?」

「あたし」

 グラスを止めて視線を動かすと、ミケも同じようにしてこちらを見つめていた。相変わらず男の割に睫が長い。

 一拍息を呑んでから一気に言った。

「イツキちゃんと付き合うことになったの」

「そっか」

「え、それだけ?」

 それだけ、って何を求めているんだい。男友達として彼女が出来たことを祝うのってこれくらいじゃない? なんて。

 ゲイが女の子に恋をした。言葉にすると簡単かもしれない。でも実際は沢山のズレとギャップに溢れているはずで。それでも二人は手を取り合うことに決めたのなら、俺はそれを応援するだけだ。でもとりあえず

「良かったじゃん」

「・・・うん」

「これで脱童貞だな」

「サイテーね!」


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