2色の絵の具
カゲトモ
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「なんだよ、こんな時間に」
珍しく勝手口からノックの音が聞こえたから開いて見ると、そこにいたのは中途半端なオネェだった。正確に言うとオネェキャバクラの衣装であるドレスは着替えて普段着になっているのに、化粧だけはまだしっかりしたまま。どうしたんだ、ってか何やってんだ。
「いや、ちょっと急いでいたから」
「何に」
「だから、その」
バイトも帰したし、後は自分が帰るだけでバックまで背負っていたのというのに。ミケは視線を泳がして答えた。
「ちょっと話さない?」
「え」
別に怒って言ったんじゃない、純粋な質問としての言葉だ。なんで?
「終電に間に合わなかったら家まで送ってあげるから」
「いや、帰り道が一緒なだけだろ」
「んもう、いいからっ」
何がいいんだ、何が。ミケは俺の返事を聞こうともせずに向かい合った勝手口から自分の店に戻って行った。
何て自由気ままな猫。もう慣れっこだけどさ。さぁさて、何の話しだろう? 珍しくノックをするからロクなことじゃないんだろうなぁ、なんて予測する。それとも? いや考えていても仕方ない。それなら逆に美味い酒でも飲ませてもらうことにしよう。
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