5分が変える世界とは

アーカーシャチャンネル

5分が変える世界とは

 ただいま、午後十一時五十五分――ある小説家は迷う。自宅で執筆していて、気がつくと深夜だった。

推敲も終わったし、一息入れてネットサーフィンしていたのが仇となったのだろう。気がつくと、明日になろうとしている時間に。

「この小説を今日に投稿すべきか、それとも明日に投稿すべきか」

 彼女はバーチャルWEBライターと言うWEB小説サイトを主戦場とした小説家である。

外見はメイド服にピンク髪、メガネに少しだけぽっちゃり体型――しかし、小説家に萌え要素は必要なのか? そう問われると『好みを全部載せしたアバター』と開き直った。

彼女の目的は商業進出――今や一次創作の分野では様々なジャンルでWEB小説の書籍化や電子書籍化等が激化している。別の意味でも一次創作コンテンツの戦国時代の到来と言えるだろう。

その彼女が投稿していた場所は、一次創作が到底ランクインする様な事のない小説サイトである。

 このサイトに投稿すれば、一次創作はランキング集計タイミングでわずかな評価でも上位ランクインが容易である。

その為、二次創作が誤爆されればわずか数分で――デイリーランキング一位も容易な為に、これをランキング攻略法とするWEBライターがいるほどだ。

「この内容で本当にいいのか――」

 彼女が投稿しようとしているのは現代を舞台としたキッズゲーム物の小説である。

キッズ向けの小説なんて、サイトで読む人間がいるのか? それこそ読む年齢層をもう少し引き上げてお色気要素等を入れた方が――?

しかし、彼女は受け狙いや一発屋みたいな作品を書く事は拒んでいる。

「考えているうちに、後二分――」

 コーヒーを飲もうとして用意する様な時間もなければ、早くしないと深夜アニメも始まってしまう。

下手にコーヒーをこぼせばタブレット端末が壊れてしまうのは目に見えている。

結局、彼女は慌てて――作品を投稿した。キャプション文も問題なし、文字数も――コンテストの規約も――。

下手に文字数が一文字でもオーバーしたら、それこそ今までの苦労は水の泡。

各種チェックも完了し、投稿ボタンを指でタッチし――投稿エラー等は表示されず、何とか無事にアップされた事を小説サイトで確認する。



 午前零時、その日のランキングが公開されたが――人気漫画の二次創作の夢小説が独占しているランキングだったのである。  

その中に自分の作品は――残念ながら。ランキングは全て二次創作で一次創作はない。

(結局は、一次創作は一次創作特化のサイトに投稿するのが一番なのか――)

 コンテストのルールには引っかかってはいないのだが、コンテストは投稿したサイトでは行われていない。

彼女は読者の傾向を見極める為に――複数サイトで投稿していたのである。

『あのサイトで一次創作が勝つには、WEB小説は一次創作以外の投稿を禁止しなくてはならない』

 あるWEB小説作品の台詞の一つだが、この台詞が事実なのか試したかったのかもしれない。


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