転生者は返り咲きたい。
紅李凛
第1話
その日は、数百年前まで生きていた、最強の英雄の命日だった。
世界中が、名前しか知らない英雄の死を悼むベき日だったのだ。
そんな日に生まれた私の瞳は、その日の空と同じく、奇妙な程、真っ赤だった。
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これは英雄の生まれ変わりが再び英雄へ返り咲く為に奮闘する成長記録の物語。
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「……あ。……シア!リシア!起きろいつまで寝てんだ莫迦!」
耳元で叫ばれて、ゆっくりと覚醒した。
目の前にはリスのような耳に、うさぎのようにもふもふの尻尾が特徴的な、私の眷属、シノア。
「あー……おはようシノア……。今何時……。」
「11時だわ莫ァ迦‼︎」
「えぇ……早過ぎる……。今日は何も予定ないじゃないか。」
「遅いわ!……あとやっぱリシア、莫迦だろ。」
はぁ……。とため息を吐き呆れたように肩をすくめたシノア。
「はぁ?私のどこが莫迦だって言うんだ?」
「今日はあいつ……えっと……そう、ユアと約束あっただろ?たった1人の友だちなのに忘れるなんて……。」
「あ。」
「あ。じゃねぇだろ。」
「だけど約束まであと2時間もあるだろう?そんなに急がなくても……」
「あぁ?お前なぁ……いつも準備に2時間かかるじゃねぇか!」
「……はぁ。」
「ため息吐きてぇのはこっちだ!」
「五月蝿い耳元で叫ぶな……。」
「ほら早く着替えろ。服は出しといてやったから。」
その言葉に私はバッと起き上がる。
「は?ちょっ……いくら眷属とは言え男が女の私物を勝手に漁るんじゃない!」
「あ?良いだろそんなもん。俺別に人間じゃねぇし。それにお前まだガキじゃん。4歳児じゃん。」
「はぁ?!確かに私はまだ4歳だがな、前世の事覚えてんだよ。大人の感性をもってんだよ!良いか、今後一切、私の物を勝手に漁るんじゃない!」
「わかったわかった。良いから早く準備しろよ。ったくどこが大人の感性だよ……。」
ぶつぶつと呟くシノア。そんな彼に私は、側にあった目覚ましグッズを投げつける。
—————ガンッ!!!!
見事、命中〜。流石私だ。
「痛ってぇ!何すんだ!」
「えぇ?何が?」
すっとぼけてみればギリっと歯を軋ませる。
本当面白い。
「お前……俺が元神の眷属だった神聖な存在であることを忘れてんじゃねぇだろうな?」
「あ。そうだったな。余りにもシノアが間抜けで物理的攻撃にも気付けない莫迦だったから忘れていたよ。悪いな。」
「お〜ま〜え〜な〜」
「さてと準備するか。ほら着替えるぞ。邪魔だ邪魔。出て行け。」
「っく!」
(本当、シノアは面白い。)
心からそう思った。
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