ある日のスイーツ
泪視点です。
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それは数日前の出来事だった。圭が夕飯の支度をし、麗を膝に乗せながらテレビを見ている時だった。
何度も見ているCMではあったが、いつも最後まで見たことのないCMだったため、そのキャッチコピーに思わずにんまりしてしまった。もちろんその中身も気になっていたし、圭と一緒に食べるのもいいかと思っていたものの、なかなかコンビニに行っている時間もないし、行けても品切れしていて、今まで現物を見たことがなかった。
それは、『初恋ショコラ』というコンビニスイーツ。
それを圭に買って来るようお願いしたのが、今朝だった。平日ではあるが、圭は先日、義兄の圭輔の休日出勤に付き合ったため、今日は代休となっていたから、お願いしたのだ。
「お圭ちゃん、お願いがあるんだけど」
「お願い?」
「うん。コンビニに行って、『初恋ショコラ』っていうチョコレートケーキを買って来てほしいんだけど」
「『初恋ショコラ』?」
「そうなの。『初恋ショコラ』、知らない? 『初恋ショコラ』って、全国チェーン展開のコンビニのチョコレートケーキで、CMキャラクターは国民的アイドルグループが努めているの。ケーキも、透明なプラスチックの容器と黒色のフタに金のリボンのパッケージが施されていて可愛いし、フォークでもスプーンでも食べられる硬さのケーキなのよ♪ しかもコンビニスイーツだからお値段も手頃だし、アイドルグループがそれぞれの個性を生かしたCMを展開しているし、従来のチョコレートケーキに比べてカロリーオフなのー♪」
そう言うと、圭は若干顔をひきつらせながらも、俺の話を聞いてくれてる。
「食べたことがないから、どうしても食べたいの! アタシは今日、どうしても抜けられない会議があるから、お圭ちゃん買って来て?」
お願い、と言うと、圭は苦笑しながらも頷いてくれた。抱き付いて圭にキスをすると、そのまま穂積本社へと行き、会議が終わったあとはそのまま本社で仕事をして帰って来たら、圭はソファーに寄りかかりながらぐったりしていた。
具合が悪いのかと思い、慌てて圭の側に寄る。
「お圭ちゃん、どうしたの?!」
「『初恋ショコラ』を買い求めて歩きすぎちゃったみたいで……足が痛いの」
疲れた声でそう言われ、平日ならすぐに入手できるかと圭に一人で買いに行かせたのは間違いだった。そのことに罪悪感が募る。
「アタシのせいよね……ごめんね」
そう言って圭の足を揉みほぐし始めた。それが気持ちいいのか、圭が溜息をつく。思わず別の溜息が聞きたくなって、その大きな胸に手を伸ばして掴み、揉もうとしたところで圭に怒られてしまった。
ご飯も食べ終え、お風呂にも入り、「久しぶりにカクテルが飲みたいわ」と言うと圭はしばらく考えたあとでコンビニ袋と一緒にカクテルを持ってきた。
「『
「お圭ちゃんのは?」
「『モーツァルト・アイスコーヒー』。同じリキュールを使ってるの」
「へえ、そうなの」
そんな会話をしながら、圭は俺の隣に座るとコンビニ袋から『初恋ショコラ』を取りだし、二人で一つずつそれを味わう。
(あら、このケーキ、思ったよりも美味しいわね)
そんなことを思いながらもCMを思い出し、圭の頭を引き寄せて額同士をくっつけ、じっと圭の目を見つめた。
「……ねえ、お圭ちゃん」
「なあに?」
「ケーキとアタシのキス……どっちが好き?」
「…………はい?」
CMのキャッチコピーを思い出してそう言うと、圭はすっとんきょうな声を上げて固まった。そこは、せめて俺を選べと内心ムッとしつつも、口の中に残るケーキの味を確かめるようにゆっくりと舌を絡めるキスをする。
圭は真っ赤になりながらもじっと俺を見つめるが、それ以外は何の反応も示さず、独り言のように「うーん……あのキャッチコピー、天然には通用しないってことね」と言うと、圭はきょとんとした顔をしたため、内心溜息をつく。これ以上の答えは聞けないか、と思っていると。
「よくわかんないけど、私は泪さんのほうが好きだよ?」
そう言われて思わず固まり、圭の顔をまじまじと見つめる。
(え……アタシが好き……? つまり、キス以上のことが好きってこと……?!)
圭が自分から誘うなんて! と曲解し、それに答えるべく圭を抱き上げてベッドへ運ぶと同時に、押し倒した。
「泪、さん……」
「お圭ちゃんが煽ったんだからね?」
ギョッとした顔をした圭にキスをしながら、着ていたパジャマのボタンを全て外し、そのまま圭を抱いた。
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