ある日のバーベキュー
泪視点です。
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今日は昼間から、事務所のメンバー全員を労うためのバーベキューをしていた。七月の第一日曜日は、毎年バーベキューをするのだが、毎年、必ず誰かが用事があって来れない者がいたりするものの、家族総出で来る者もいるので、かなり賑やかである。
今年は、飯田、岡崎が家族総出、佐藤が婚約者を連れて来ていた。
「花火始めるわよー」
「わーい!」
軒下でバーベキューをしながら、飯田や岡崎が連れてきた子供たちは、嬉しそうに花火をしている。
娘の麗は、お気に入りの招き猫のぬいぐるみを抱いていた。さっきまでは俺の膝の上でおとなしくしていたのだが、子供たちが花火を始めた途端、もぞもぞと動き出した。
「あら。麗もやりたいの?」
「あー!」
「じゃあ、アタシと一緒にやりましょうか」
「きゃー♪」
招き猫を離さず足をバタバタさせて喜ぶ麗に笑いながら、花火を一本持たせ、その上から自分の手を重ねて持つと、圭に火をつけてもらった。
子供たちのはしゃぐ声、その様子を見ながらお酒やジュースを飲む大人たち。月末には花火大会もあるから、またバーベキューになるだろう。
花火も終わり、バーベキューも終わり、片付けを始めたころになって雨が降ってきた。
「あら、残念。降って来ちゃったわね……」
「仕方ないですよ。でも、ここまでもってくれてよかったです」
分別して捨てられるようビニール袋を用意し、いっぱいになった袋の口を縛りながらどんどん片付けて行く圭や女性たち。それが終わるころ、ポツポツと降っていた雨は土砂降りに変わってしまった。
「間一髪でしたね」
「そうですね。皆さん、お疲れ様でした。あとは私がやりますので、お部屋で休んでください」
「でも……」
「大丈夫ですから。ね、泪さん」
「ええ。部屋でゆっくりしてちょうだい」
そう言って俺は麗を連れ、その場を一旦圭に任せて彼らを部屋へと促した。
事務所のさらに奥には客間がある。客間というよりは、ホテルのような作りの部屋がいくつかあるのだ。毎年、彼らはここで一泊し、翌朝帰って行くのだ。
それはともかく、麗をお風呂に入れてからベビーベッドへ寝かせると、麗は疲れたのかすぐに眠ってしまったため、横に招き猫を置いて圭のところへ戻ると、片付けが終わってしまっていた。
「お圭ちゃん、ごめんね」
「大丈夫。麗は?」
「お風呂に入れて寝かせたら、すぐに寝ちゃったわ」
「お風呂に入れてくれたんだ。ありがとう」
「いいえ。さて、今度はお圭ちゃんをお風呂に入れないとね」
「は?! ちょっ、泪さん!」
騒ぐ圭の口を塞いで黙らせると、そのままお風呂場に直行した。
***
「……泪さんのバカっ!」
「お肉や野菜以上に美味しかったわよ」
クスクス笑いながら、ぐったりしている圭を後ろから抱き締める。圭の身体を洗いながら圭を抱こうとしたら怒られてしまったため、ベッドで圭を散々喘がせたら拗ねられてしまった。
「雨、全然止まないね」
「そうね。これじゃ、織姫と牽牛は来年まで会えないわね」
「そんなことないよ?」
「え?」
「七夕の話に続きがあるの、知ってる?」
圭にそう聞かれて「知らないわ」と言うと、圭が話してくれた。
「天の川の対岸で二人が悲しそうに佇んでいると、どこからともなくカササギが飛んできて、二人が会えるように橋を作るの。だから、雨が降っても、二人は会えるんだよ」
「素敵な話ね」
「でしょ?」
「俺も……圭に会えてよかった」
ポツリとそう呟くと、圭の顔が一気に真っ赤になった。
「あら、可愛い!」
「ちょっ、泪さん!」
「アタシの男言葉でそんな反応するなら、ずっと男言葉でいようかしら」
あたふたする圭は本当に可愛くて。それに煽られる形で、また圭を抱いた。
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