2001年9月8日(土)

 方丈凛の短編が収録されている本は、まだ書店で販売されていた。

 同じ本に収録されている、方丈凛ではない別の作家が書いた短編が、いまでも高い評価を得ているので、この短編集も絶版にならず、なお版を重ね続けているみたい。


 その短編も読んでみたけれど、なかなか面白かったわ。

 愛し合っている恋人たちが、ちょっとした気持ちのすれ違いで永遠に別れてしまう物語。

 こう書くとありがちな筋の作品に見えるけど、登場人物の心理描写にとても見るものがあったのよ。


 まあ、その短編については、また後日。

 いま見るべきはペンネーム『方丈凛』の短編小説。


 新人作家だけあって、文章は粗削り。

 だけど文章力はこの際、どうでもよくて……。

 問題は、作品の内容ね。




『主人公はおとなしめの女子高生。

 その主人公には片想いをしているAという人物がいた。

 しかし主人公はとても恥ずかしがりやで、Aとはうまく口も利けない。


 やがてAには恋人ができる。

 主人公はショックを受ける。

 さらに苦しいのは、Aはその恋人と長続きせず、結局別れを告げられるのだ。

 恋人は、Aのことを遊び程度にしか認識していなかったのだ。

 Aは失恋のショックで自殺してしまう。


 主人公は、Aの元恋人を激しく憎む。

 そして元恋人に恨みの手紙を送りまくる。


 お前のせいで、Aは死んだのだ。

 絶対に許さない。私はお前をいつでも見ている。

 いつか必ずAの無念を晴らしてやる……。


 元恋人はやがて恐怖で発狂し、最後はこちらも自殺する。

 主人公は高らかに笑った。恋は叶わねど復讐は果たしたのだから……』




 どうかしら、この筋書き……。


 この新人作家『方丈凛』が、第2の事件被害者の『北条凛』と同一人物かどうかは分からない。

 だけど同一人物だとしたら……。この小説はもしかして実話をもとにしていたりしないかしら?

 主人公が北条凛で、片想いをしている相手Aは、当時M高校の3年生だった岡部義太郎……。


 でも、小説の中でAは死んでいるけれど、死んだのは岡部義太郎じゃなくて妹の愛子よね。

 やっぱりこれは関係ないかしら。ただの作り話、どこまでも小説なのかもしれない。

『方丈凛』も『北条凛』とは無関係かもね……。


 ……どうなのかしら?

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