袴田みなも《はかまだみなも》の日記

2001年7月10日(火)

 午前6時半起床、体調良好。

 中学1年生のころから気まぐれでつけ始めた日記も、これでついに50冊目になる。

 いつまで続くのか分からないけれど、せめて高校を出るまでは書き続けたい。


 今日は高校の友達とカラオケに行った。

 男子は天ヶ瀬佑樹くん、長谷川幸平くんのふたり。

 女子は私と、御堂若菜、山本キキラの3人。楽しいひとときだった。


 高校を出るまでは、と先ほど書いたのだけど。

 卒業のころには、私は自分の気持ちを彼に伝えられているだろうか。

 天ヶ瀬佑樹くん。……高校に入って、この私が初めて恋をした、彼に。


 非常に情けないことなのだけど、一目惚れだった。

 M高校に入学し、教室にやってきて、彼を見た瞬間――その容姿に、まず心惹かれた。

 最初は、嘘だと思った。この私が、ただ男子を見るだけで心ときめかせるなんて。だけど自分でも笑っちゃうくらい、その日の自分は顔を真っ赤にさせていた。……彼が、かっこいい。……大好き。自覚してしまった。


 19世紀のフランスの小説家、スタンダールはその著書『恋愛論』の中で雷撃の恋というのを説いている。

 理由などなにもない、ただあっという間に相手を好きになってしまう恋のことをそう呼ぶのだ、と。

 最初にその本を読んだときは、そんなバカな、と一笑に付していたのだけれど、もう私はスタンダールを笑えない。

 だって、いまの私は天ヶ瀬くんを愛しているから。――




 それからのちに友達になって、親しく話すようになると、私は、彼の人格も愛するようになった。

 明るくて、優しくて、行動的で、だけどちょっと抜けているところもあって。それらすべてが好ましかった。どうして、こんなに彼を愛しているんだろう。なぜ、こんなにも天ヶ瀬くんを求めてしまうのだろう。


 昔の私がいまの私を見たら、笑うと思う。

 自分がここまで女臭い人間だとは思っていなかった。

 いまのままでは、当たって砕けろ式に操を捧げかねない。はしたない。


 だけど、それでも。


 ……天ヶ瀬佑樹くん。

 その名前を書くだけで、胸がときめいてしまう。

 彼に愛をささやかれている妄想を繰り広げつつ、今日も慰みの世界に入ろう。




 明日は彼と、どんな話ができるのかしら。

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