隣に住む観察者

第1話

大学が長期休暇に入り、同い年の連中は楽しい楽しい夏休みを過ごしているらしいが、僕は日課を欠かさなかった。去年から住み始めたワンルームの部屋にある窓は全面、遮光カーテンがひかれ、一欠けらも光を漏らさないようにしてある。ニュースでは温暖化だかなんだか言っているが知ったことではない。冷房の温度は常に18度に設定してあり、一度も変えたことはない。理由は言うまでもなく見てもらえばわかる。とうとう100キロ台に入った僕と、バカでかい自作のパソコンが熱を発している為だ。


そんなことはどうでもいい。僕は今、一瞬も目を離せない。画面に映っている少女を観察するからだ。去年、運命的に出会った僕だけの天使はとても可愛らしく、グラビアの表紙に載るほど人気がある。それから僕たちは運命に導かれるように隣同士の部屋で暮らすことになり、僕は彼女の安全を守るために合鍵を作り、部屋のあちらこちらに小型のカメラと盗聴器を仕込んだ。そして、僕は一日の大半をモニターの前で過ごすようになった。彼女を見守るために。彼女がどんな本を好み、どんな料理が好きなのかを知るのは嬉しかった。今では使っているシャンプーの銘柄も、ナプキンすら把握している。ゴミ出しの日には彼女の私物をもらい、大切に保管してある。電話は勇気がなくて掛けられないけど、それでも声は聞ける。それで満足だった。ただ、平穏な日々を過ごしていけたらと、それだけを思い続けていた。


それを、あの女は裏切ったのだ。

僕と言う男がいるにも関わらず、知らない年上の男と付き合うようになった。

許せなかった。だから、これからどうやって彼女に罰を加えるのか考えている。それが、今年の夏休みの課題になった。

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隣に住む観察者 @yanagi0404

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