犬達は何で風船を膨らませているのか?
アほリ
犬達は何で風船を膨らませているのか?
これは今から5分前の話。
ぷぅーーーーー!!
ぷぅーーーーー!!
「わー!何でみんなでゴム風船なんか口で膨らませているの~?!」
シープカットのトイプードルのクムは、犬仲間達がほっぺたをめいっぱい孕ませて思い思いにふくらませている風船にビビって、耳を塞ぎながら叫んだ。
「ダイジョウブだよ!!クムちゃん!!ねえ、君も風船をふく・・・」
ぱぁーーーーん!!
「きゃーーー!!」
ボストンテリアのイギツの、パンパンに膨らませ過ぎた赤い風船が割れた音に、トイプードルのクムはビックリして腰をぬかしてしまった。
ぶおおおおお~~~~ぷしゅーーーー!!
「きゃーー!!何よ!!」
トイプーのクムは、目の前に吹っ飛んできて頭の上に堕ちてきた黄色い風船を摘まんで、プンプン怒った。
「ごめんごめん!」つい肉球から離しちゃった。
パグのブースは、ほっぺたを掻いて申し訳なさそうにやってきた。
トイプーのクムは辺りを見渡すと他の犬仲間達もまた、様々な大きさの風船を口で膨らませていた。
「ねぇ、クムちゃんはどんな色の風船膨らませたい?」
「え・・・え?」
青い風船を膨らませた柴犬のタロベに、クムは困惑して声を詰まらせた。
ぷぅーーーー!!
「クムちゃん。お手入れだだいま。」
「カ、カリン先輩まで!!こ、こんなに超でっかい風船を膨らませて・・・ぷーっ!ぷぷぷ!頬が孕みすぎて顔が物凄く浮腫んでる!!」
「失礼なクムちゃん。」
犬仲間の中で一番図体の逞しいロットワイラーのカリンは、一生懸命息を吹きこんでいたオレンジ色の風船の吹き口を前脚の指で挟んでニヤリと笑うと、ピンク色のまだ膨らませていない風船の吹き口をクムの口に押し込んだ。
「君も一緒に風船を膨らまそうよ!!」
「えー!何でー?!」
トイプーのクムは、思わず口からゴム風船の吹き口を吐き出した。
「風船吐き出すなよ。何でみーんな風船をいっぱい膨らませているか、君に教えてあげよう。」
ロットワイラーのカリンは、トイプードルのクムのフサフサした垂れ下がった耳を捲し上げてひそひそと話した。
「え~~~っ!!そうなの!!やるやる!!私も風船膨らませるわ!!」
トイプードルのクムは、いきなりピンク色の風船をパワフルに、ぷぅーーぷぅーーぷぅーーぷぅーー!!と大きく膨らませた。
「スゲー迫力!クムちゃん美貌が崩れる位、物凄い形相で膨らますなあ。」
5分過ぎた。
・・・・・・
わん!わん!わん!わん!
ばう!ばう!ばう!ばう!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
「わーい!ワンちゃんだ!」
「風船がこんなにいっぱい!!
「ワンちゃん!こっちへ来て!」「風船ちょうだい!」
実は、この犬達は『セラピードッグ』。
災害事故で被災した子供達の慰安の為に、風船と犬達との触れ合いが企画されたのだ。
「この風船、僕が膨らませたんだ!」「この風船、私!頑張ったわ!」
子供達と犬達は風船と共に素敵なひと時を過ごした。
~fin~
犬達は何で風船を膨らませているのか? アほリ @ahori1970
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