第67話 四十九日間の隣人

 隣に若い夫婦が越してきたので、和代は挨拶がてら、ゴミ出しのルールやらを教えに行った。隣の夫婦は、底抜けに明るい人たちだった。何を言っても楽しそうに笑っていた。話を聞いているのかどうか怪しいくらいだったが、あんまり楽しそうにしているので、不思議と腹は立たなかった。

 困ったのが夜だ。

 夫婦は夜遅くまで大声で笑い合っていた。酒盛りでもしているのか、陽気な声は途切れることなく朝まで続いた。朝になっても笑い声は止まなかった。

 何日かして、和代は隣の夫婦をいぶかしみだした。

 夫婦のどちらも働いている様子がなかった。それどころか、家を出ている気配すら感じられなかった。

 夫婦のどんちゃん騒ぎは一ヶ月以上続いた。

 ある日、夫婦が家に訪ねてきた。

「お騒がせしました。これから発つので、お別れを言いに着ました」

 旅行にでも行くのだろうか?

 それにしては「お別れ」とは大げさだが。

 和代は首を傾げつつ、二人を見送った。

 その日から、隣の家は静かになった。

 後にそこから白骨化した遺体が二組見つかる日まで、その家は静まり返っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る