黄泉怪談!
くまねこ
第1話 ダム湖の湖畔
ある冬の夜更けに気分転換がてら車を飛ばし近畿地方のとあるダム湖へドライブに行った。時間は11時を過ぎ昼間でも交通量の少ない道なので、すれ違う車もない。たまにドライブに来る道なのでカーブなども覚えているが、この日は何かを考えていたのか気付いた時にはとてもカーブを曲がれるスピードではなく。タイヤのスキール音とともに事故を起こし走行不能になってしまいました。
当時はまだ携帯電話もなく、ダム湖の畔で公衆電話はおろか民家すらありません。とりあえず電話の借りられるところまで行くのに何キロか歩かなければなりません。
「仕方がない歩くか…」
一番近い集落まで歩き始めましたが、懐中電灯もなくダム湖畔で電燈もありません。
車でも来てくれないかと言う淡い期待も虚しく一台も来ません。しばらくたつと月明かりで少し周りも見えるようになり、車の修理代の事を考えながら歩いていました。
「そういえばトンネルがあったなぁ」
集落までの間にはトンネルが二つあったのを思い出しました。そのトンネルには電燈もなく真っ暗で、幽霊が出るという噂までありました。
「まさか噂だし、幽霊なんかいないよな」
自分に言い聞かせながら歩いていました。山の中からは動物の鳴き声や動いてる音が聞こえてきます。それ以外は一切音がありません。暗い道を進んでいくと視界の先に一層黒い穴が見えてきました。
段々と黒い穴が大きくなってくるにしたがい不安な気持ちも大きくなっていきます。
ついに一つ目のトンネルが目の前に来ました。
真っ暗な中、はるか先にうっすらと出口が見えています。長さは200メートル位の短いトンネルですが歩くとなると勇気がいります。
「行くか…」
先にうっすらと見えている出口を見据えトンネルへ入っていきました。
トンネルを進んでいくと周囲の音が自分の足音以外何もありません。やっと半分ほど進んだ時に何か前方の出口の辺りを白いものが横切ったように見え歩きを止めしばらく見つめていましたが、それ以降何も変化がなく観間違いで済ますことにしてまた歩き始めました。徐々に大きくなってくる出口に安心が広がってきます。
一つ目のトンネルを抜けましたが、振り返ってみる余裕はなかったです。しばらく行くと二つ目のトンネルがあるのですが、こちらは長さは一つ目と同じくらいですがカーブしているために出口が見えないんです。尚且つ電燈も付いていない。目印に出来るものがないので壁伝いに行くしかないんです。しかも幽霊が出る噂まであるので近づくにつれ心臓の鼓動が早くなっていくのが分かります。
見えてきました、宵闇の中に一層黒い穴が…
「このトンネルさえ抜けれれば、何とかなる。」
ついに入り口に着きました。本当に真っ暗です。宵闇に慣れた目で見ても何も見えません。意を決し壁に手を突きながら踏み込んで行きます。見渡しても何も見えないので自然と耳が敏感になってきます。
50メートル位進んだ頃でしょうか女性の悲鳴のような音がトンネルに響き渡りました。突然の事に歩みは止まり、心臓は爆発寸前な位鼓動を速めています。動けません、足は震え進むことも戻ることも出来ません。自分の中では1時間は経ったように思える頃、あれからは何も聞こえてこないので少し平常心に戻ってきてこんな所に居たくないので少しずつ歩み始めました。もう中間位まで進んだかと思った時に今度は笑い声が響き渡りました。反響でどちらから聞こえたかが分かりません。真っ暗な中走りだしたい衝動はあるが全く見えないのでそれも出来ません。しばらく壁にへばり付き様子をうかがっていましたが、静寂の中聞こえるのは自分の鼓動の音だけです。
呼吸を整え鼓動が少しずつ落ち着いてきた、その時「あなたが私を殺したの?」耳もとで聞こえました。
早朝に新聞配達の人にトンネル内で倒れているところを発見され助かりました。
それ以来夜はダム湖へドライブは行っていません。
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