第三章 代表戦前練習
3-1 秘密会議
ここは、王国騎士団本部の人事課。
毎年の入学試験や、訓練生の支援、冒険者を武闘騎士や魔法騎士へのスカウト、その他もろもろの業務がある。
今は今年の受験生の採点や情報収集の整理をしている。
しかし今年はいつもと雰囲気が違うようだ。王国騎士団長キルギスも呼ばれた。
「団長、常識外れの受験生がいたそうです。エリックと言う受験生です。試験は0点だったけど、裏に書かれていた問題がこの国にある未解決問題の一つで、500年前に英雄ギルベルトが問いたあと、いつしか回答が紛失して、今日まで誰も解けなかった問題が書かれていたのです。しかも回答が解説付きで。」
「武術の試験では、9人の一斉攻撃を全てかわしました。そして魔法の試験では、4人の魔法を全てかわしたり、消し飛ばしたりして、ノーダメージでした。」
「二日目の宿泊試験では、王女様達と同じグループとなり、見事最後まで残りました。あの王女様達がですよ。キルギス団長、どうしましょう?」
「国王様に知らせないと。。。。」
急遽、王宮の会議室に、国王レオナルドと、国王の弟である伯爵レオポルト、そしてマルチス正教会の教皇エリアスが集まった。団長キルギスから試験報告を受けた。それぞれ、シャーロット、クリスティーナ、カレンの父親だ。
「まさか、娘たちが最後まで残るとは。」
「今回のことで、才能が無いと言って、国政に集中してもらおうと思っていたのだが。」
「治療士を諦めて、教会の運営と悩み相談室を任せようと思っていたのですが。」
「しかし、このエリックとは一体何者だ?カジカの村から来たとのことだが。」
「最初の書類を書く際に、【守護士】について聞いていたそうです。」
「なに、【守護士】だと?、英雄ギルベルト以来、誰も出来なかったので、次第に人気が無くなり、今は伝説の職業のはず。なぜそれを?そもそも、教える人もいないし、本にも乗っていない。銅像も英雄としか書かれていないので、【守護士】という言葉すら知らないはず。」
「国王、どうしましょう?」
「うむ。何らかの理由をつけて、不合格にするしかあるまい。親として、戦場には行かせたくない。」
「そうですね、ここは親として。。。」
「キルギス君、申し訳ないのだが、・・・お願いする。理由は今日中に考えておいてくれ。」
「国王様、絶対バレて、また王女様たちに嫌われますよ。」
「うう、仕方有るまい。。。」
「この、エリックの処遇はいかがしましょう?」
「特に問題を起こしたわけではない・・・様子見で入団させよう。」
取り敢えず話はまとまったようだ。
この密会を屋根裏でタマの子分の猫が聞いていた。そしてさっと立ち去った。
その日の夕方、エリックの部屋に幻獣たちが集まった。
「国王は、彼女達を不合格にするらしいにゃ。」
「エリック様、彼女達は今後の有望株ですぞ。」
「ああ、分かっている。たぶん魔王を倒すには、彼女達の力が必要だと思う。」
「王様を脅すにゃか?」
「それはまずい。後々恨みを買うことになる。」
「魔王が復活する事を言いますか?」
「今の僕では信用しないだろう。」
「ここはひとつ、彼女たちにバラしてみては?」
「なるほど、彼女たちに暴れてもらうか?」
さっそく、タマに伝言を伝えた。タマは分かったと言って、乾燥マタタビを咥えたまま彼女たちの家に向かった。さて、吉報を待つか。
次の日、朝食を取ったあと部屋で片付けをしていると、ドタドタと階段を上がってくる音がした。
「ちょっと、エリック、この扉を開けなさい!」
シャーロットの声だ。扉を開けると、三人の女子がいた。
「ちょっと聞いてよ。タマから話を聞いて、直ぐにお父様たちの所にいったわ。そしたら、総合で不合格だって。二日目はちゃんと最後まで残ったのに!」
「一日目の実技試験で、シャーロットの剣が当たらず、私の魔法も当たらずは理解したの。でも、二日目と三日目の宿泊訓練では、魔獣との戦いもあまり良くなくて、テント設置も手伝わず、お茶ばかり飲んでたって。一人いた男性に全部任せてたって言うの、本当に失礼ですわ。」
「私は戦闘中ずっと頭を抱えていんだって。もうショックです!」
彼女らの親たちが言っていることは、そんなに間違っていないと思う。
「とにかく、大暴れしたの。それでも認めないと言うものだから、男と家出してやるって言ったら、次の国別対抗戦の代表に選ばれたら認めるだって。本当腹が立ったわ。でもとにかく、仮合格扱いにはなったの。」
シャーロットが暴れた様子が目に見える。国王様、なんて可哀想に。。。
「因みに、対抗戦はエリックも同じチームだからね。それも約束済みよ。感謝しなさい!」
「また同じチームですね。」
「宜しくでござる」
とにかく、仮でも合格出来たので良かった。
「あと、エリックも代表戦で勝たないと、合格取り消しだからね。」
「え、何で僕がそうなるの?」
「同じチームにする時の条件だったから仕方ないわ。まあ、勝てばいいですのよ。」
思わぬ方向に行ってしまった。
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