第8話
お昼になったので僕は一抹の不安を残しながら、利佳と一緒に某ファストフード店に入った。頼んだハンバーガー類を受け取り空いている席に向かい合って座る。今日が土曜日だからか、ほかの席はすべて埋まっている。
「ねぇ。私の着てた服に合ってた?」
「とてもよく似合ってたよ。せっかくだし買えばよかったのに」
利佳の着る服なら何でも可愛いと思ってしまった自分がいたことに少し恥ずかしさを感じつつも質問に対する答えを返す。
「そうかな~ なら、少し考えてみようかな。そういや、あの店員さんわたしたちのことカップルだと思ってたね」
「そうだったね。そう思われて嫌だったりしなかった?」
僕は思いっきり聞いてみることにした。
「別に嫌ではなかったよ。むしろ・・・ったかも」
最後の部分はよく聞き取れなかったが、嫌とは思われてなかったようだ。ひとまず安心した。
「そういや、たっちゃんって好きな人とかいるの?」
「へぇ? なんだよ、いきなり。驚いたじゃないか」
「ごめんごめん。結構長くいるけど好きな人とか聞いたことないなって」
「それはお互い様だろ」
いきなりの質問に柔軟に答えたとは言えないが、ばれてはいないだろう。でも、利佳の好きな人はとても気になる・・・
「そういう、利佳はだれか好きな人いるの?」
「ヒ・ミ・ツ」
「じゃあ、僕も教えな~い」
と、言いつつもとても気になったがいまさら聞くのもと思いあきらめ話題を変える。
「で、コンクールに向けてはどうなの?」
「ミスとか途中で止まるとか致命的な問題はないんだけど、先生曰く私のピアノには感情が込められてないんだって。私も意識しようとはしてるんだけどね、誰にどんな風に感情をこめたらいいのかわかんなくて」
「そうなのか~ ピアノって奥が深いね。素人目線だけどさ、意見みたいなの言ってもいい?」
「全然ウェルカムだよ。むしろ、こういうのは素人のほうが素直なコメントくれるしね」
「なら、遠慮なく。少しお節介かもしれないけど、そのいるであろう好きな人とかに好きっていう気持ちをこめたらいいじゃん」
「それはいいアイデアかもね。でも、好きな人とかいないから仕方なくたっちゃんに向けて引くことにするよ」
「仕方ないってなんだよ。まあ、でもありがと」
「結構話してたみたいだね。そろそろ時間だし映画館に行こうか」
「そうだね」
ついに映画だ。ここで利佳に僕の気持を伝えてやる!!!
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