第6話

 家に帰ってから、僕は自分の部屋で考え込んでいた。あの二日間で見た夢はただの勘違いだったのかと。

 夢で見た未来では僕はもうすでに病院に入院しているはずだ。だが、今の僕はフルマラソンに出るのはきついがすこぶる体調が悪いなどということは一切ない。むしろ、元気なほうだ。そして、音楽室で利佳の伴奏を聞いた時に見たあの光景は何だったのだろうか。頭の中をグルグルさせているとつけっぱなしにしていたテレビから気になる発言がきこえてきた。


『皆さんは、「運命の音」というものをご存知でしょうか?

「運命」とは人の意思を超越したものだと私は考えます。また、音楽は古来から運命に対して強い干渉力を持つと考えられてきました。そして、その運命に直接干渉することができる音楽こそが「運命の音」なのです。

ベートーヴェンの交響曲第五番は副題に「運命」という名前が付けられていますが、これは諸説にベートーヴェンが運命の音を体感したからといわれています。

「運命の音」は時に人の生死にも干渉します。もし、あなたが音楽に助けられたということが」あるのであればそれはきっと「運命の音」の恩恵を受けたからでしょう。』


 運命の音か、もしかしたら利佳のピアノは僕にとっての「運命の音」なのかもしれないな。そう思った瞬間、激しい頭痛が僕の頭に走る。


「うっ。いた…い」


 いきなりの痛みに耐え切れずに、僕の意識は遠のいていってしまった。




♪ピピピピピピ、ピピピピピピ、ピピピピピピ♪



 目覚まし時計のアラーム音が聞こえる。あれ、僕はいつ眠ってしまったのだろう。いや、昨日はいきなり頭痛に襲われて気を失っていたんだ。

 でも、あれはいったい何だったのだろう。


♪ピピピピピピ、ピピピピピピ、ピピピピピピ♪


 そういえば、まだ目覚ましのアラームを止めてなかったな。そう思い時計に視線を移すとデジタル時計は8:30を指していた。

 やばい、絶対間に合わない。待ち合わせの映画館までは、優に30分はかかる。僕はすぐにスマホを取り出して、利佳に寝坊をしてしまい遅れるという趣旨のメールを送った。すると、利佳からは「分かった」の一文だけだった。もっと、怒られると思っていたので少しほっとした。

 すぐに、準備を済ませて家を出る。今日は、少しでも好印象を利佳に見せておきたかったのに・・・




~あとがき~

 久しぶりにあとがきを書きます。こたつです。正直に言いますと、まだ恋の音色。全部書き終わっておりません!!

 頭の中で、プロットのようなものは完成しているのですが学校の体育祭、文化祭の準備に追われあたふたしております。

 ですが、ご安心を! 恋の音色は必ず期間中に完結させますので、お付き合いいただけると幸いです。

 

今回でてきた、テレビの中での設定はすべて私自身が考えたものです。諸説も私の作った架空の設定です。

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