魔王軍の暗器使い
ネムリア
第1話 『スキルが追加されました』
私は役立たずなエルフである。なぜかって?エルフなのに魔法が使えないからに決まっているだろう。古来よりエルフは魔法適正に恵まれてきた。しかし、私にはまったくの才能がなかったのである。長老曰く、600年生きてきた中でこれほどの数値には出会ったことがないくらいだそうだ。両親はとても優秀な魔法士だし、13歳になる妹もすでに才覚が見え始めている。なのでこれは遺伝の問題ではなく私個人の問題だ。
魔法が使えないなら使わない仕事をすればいいじゃないかと思う人もいるだろうがこの村ではすべての仕事に魔法を使う。畑だってそうだ。土魔法で畑を耕し風魔法で種をまく。最後は水魔法で水やりをするような感じだ。
私が一生懸命仕事をして10時間かかるところをみんなは一時間足らずで終わらせてしまう。仕事の遅い私を見てほかのエルフはみなさげすむような眼で見てくるがそれだけならまだ軽いほうだ。時に嫌がらせをしてくるときもある。
私が種を植えているときに水魔法を頭からかけてきたり土まみれにしてきたり、そんな憂鬱な日々を18年送っていた。そしてついに長老の家に呼び出された。
「お前はエルフ2000年の歴史を汚す役立たずだ。今日まで我慢してきたがもう無理だ。この村から出ていけ」
そう言われた。もうすでに生きる気をなくしていた私はこくりと頷くと家に戻った。いや、家とは呼べるものではないだろう。数年前から私は馬小屋で生活していた。もちろん妹は家の中だ。両親は私の顔を見るのが嫌でしょうがないらしい。もし顔を合わせれば問答無用で体罰を与えてくるだろう。すでに背中には一生消えない傷があることがそれが嘘ではないことを物語っている。
しかし、そんな私にも一人の味方がいた。私の妹、フローラだ。フローラは両親が出かけている隙に私に食べ物をくれる。ほかにも背中の痛みで眠れないときはヒールをかけ痛みを和らげてくれる。本当にいい妹を持ったと思う。でも、それも今日までだ。私はこの村を出ていかなければならない。フローラに別れの挨拶をしたいところだがそれは両親が邪魔してくることは間違いないのでそれはかなわない。
なので私は二着しかない着替えをぼろぼろのリュックに入れると馬小屋の戸を閉めた。
空を見上げるとすでに日は沈み夜になっていた。夜に村を出るというのは危険と思われるかもしれないが、村を出た瞬間エルフに証拠隠滅のため殺しにかかってくるかもしれない。だから、この時間に出ることにした。
魔物から守るための結界を通り抜ける。そして私は振り返ることなく歩みを進めた。
「今日はこの辺にするか」
3時間ほど歩き川沿いにたどり着くとそこに寝床を作った。寝床といっても木を背にして着替え用の服で暖をとるだけだが。
「もう疲れたし寝るか」
精神的疲れも合わさって目がとろけていく。
……『スキル、
そんな中、頭から声が聞こえた気がしたが意識は覚醒することなく深く沈んでいった。
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