第4話
トキワ村を出た直後は慣れない事の連続で苦労も多かったが、お嬢様は立派な冒険者として日々成長されていった。
それに伴って我らコッココも、お嬢様のお供として順調に役目を果たし、レベルアップしていく。
守護獣となった我らは大幅に肉体を強化され、能力も底上げされていたので、そこらにいる同じ大きさの動物くらいに敗北しないまでには、成長できてしていた。
コッココとしての基本レベルである、レベル1から大幅に成長し今ではあの時からは信じられないレベル10まで登りつめた。もちろん油断も過信もしない、我らの目標魔未だ遥か彼方にあるのだから。
だが、旅の間にお嬢様が同じテイマーと出会った時には、相手からただの雑魚生物、家畜風情のコッココを育てるなど物好きだと嘲笑される事もあった。
本来のテイマーは、強い個体を手なずけて連れて歩くのが普通で、その守護獣の強さで他人からの評価が変わるという。
そだから、コッココという家畜を守護獣にして連れているお嬢様は、他の者からよく見くびられていたのだ。
しかし、お嬢様は逞しかった。
彼等の言葉に耳を貸すことなく「コッココちゃんは気にしなくて良いんだからね」と微笑んで、それからも引き続いて我らを共に選んでくださったのだ。
ナインフォードお嬢様には感謝してもしきれない。
だが、我等にはそんなお嬢様の内心が分からなかった。
立派な冒険者となるなら、たかが家畜であるコッココを選ばずとも良いはずだろうに、なぜ我らコッココをあえて連れているのか。
仲間達と顔を合わせ知恵を絞っても、理由はいつまでも分からなかった。
お嬢様が小さい頃から共にいた為に、家族だと思い離れがたく思っているのだろうかとも。
だが、それも違う様だった。
その事が分かったのは、見晴らしの悪い山林の中を歩いていた時の事だ。
「きゃっ、コッココちゃんお願い!」
「コケー!」
「コケコっ!」
「コケコッコーっ!」
不意を打たれる事になったお嬢様を守る様に我らは、敵の前へと立ちはだかる。
相手はこれまでに戦た事のない強敵だった。
インセクトマンティスクイーン。
カマキリのような見た目をしたモンスターであるが、クイーンとついた名が示す通りかなかなりの大物だ。
レベル20ほどの力を持つ相手に、我らは圧倒的に不利だった。
我らは三位一体となり、必殺技を何度か繰り出した。
「「「コォォォ、コケコッコォォォォォォー!」」」
かなり危なかったが、どうにか隙を見つけて技を発動、三体分のコッココの合唱を食らわせ、軽い混乱の状態異常を引き起こした
そこからは、追い打ちをかけて撃破できるような力は持っていなかったので逃走一択だ。
そうして、強敵であるインセクトクイーンからかろうじて逃れる事が出来た。
お嬢様はその時に、我らにこう告げられたのだった。
「どんなに敵が強くても立ち向かう意思の強さがある。そんなコッココちゃんがいてくれるから、私は冒険者として頑張れるんだよ。いつかあんなのもやっつけられるくらい一緒に強くなろうね」
何という事か。
お嬢様は慈悲として我らに手を差し伸べられていたのではなく、対等な研鑽し合える存在として選んでくださっていたのだ。
我らは我らの、見当違いの考えを恥じた。
そんなナインフォードお嬢様と共に歩けるこの身を誇りに思おう。
お嬢様は誰よりも立派で素晴らしい人間であった。
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