硝子人形は踊らない

楠木黒猫きな粉

第一楽章 【硝子少女の世界事】

プロローグ 【ガラス玉のように】

———痛い


体に銀色が入る。自分の中が荒らされているのがわかってしまう。


———痛い


やめて、やめて、と叫んでも返事はない。荒らし終えればヤツラは私を無造作に投げ捨てる。

幾百回繰り返されたその出来事に私の体は慣れもしない。


ちぎれるように流れる時間に私は私に聞いた。どうしてこうなってしまったのだろう。

どうして私は【ウタ】なんて物が出来てしまったのだろう。

知らない。知らない知らない知らない。ただ私はみんなと一緒が良かったんだ。それが望みだったんだ。

でも、なんで…なんで私は…違うんだ…


私は一人の牢獄の中で呟いた。

変えられてしまった自分を消すように。

成ってしまった自分を戒めるように。

子供の頃拾ったガラス玉はすぐに割れた。

きっとこれが世界なんだ、と私は思った。

けれど今は違う。

アレはきっと私自身だったんだ。石に紛れていたガラス玉は私だったんだ。

だから私は諦めを込めて呟いた。


「硝子人形は割れている」


たったそれだけを呟いた。






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