未希とお姉ちゃん

pinklove

結婚式

今日は友里姉の結婚式だし、子供の一歳の誕生日。

結婚式をする前に出産してしまったので予定よりだいぶ結婚式の日が遅くなってしまった。

友里姉は車椅子に乗って子供(友希)を膝に乗せている。出産後も長期入院していて運動をしていなかったせいで脚が硬直してしまった。でも、この日のために一所懸命リハビリをしてきた。未希と一緒に。まだ彼の前で歩いたことはない。だから今日はサプライズである歩くことにしていた。


「友里姉、めっちゃ綺麗だよ。」

「お世辞言わないの。」

「本当なんだから。友里姉はいつでも綺麗だよ。」


友里姉はウエディングドレスを着ていた。初めて見る友里姉のウエディングドレス姿は想像していたより100倍いやもっと綺麗だった。よく見るとペンダントを付けている。私が誕生に貰ったペアのペンダントを。今日はらわたしも付けていた。


「友希姉、ペンダントしているんだね。」

「あーこれ?未希にあげたやつ。」

「私も今してる。ほら。」

「以心伝心だね。私これがあるとなんか安心するんだよね。何でか分からないけど。くっ付けよう。」

「うん。」


ペンダントをくっ付けるとハートになった。私もこれがあると心が落ち着く。友里

がそばにいてくれている気分になる。すると美咲が来た。


「ごめん。遅れた。」

「遅いよ。何してたの?」


何か紙袋を持っている。


「美咲、何その紙袋?」未希が尋ねた。

「後でのお楽しみ。てか友里めっちゃ可愛い。」

「でしょ。私の自慢の姉なんだから当たり前よ。」

「何よその言い方。友里は私の妹でもあるのよ。」

「まあまあ2人ともこんな所で喧嘩しないの。」

「そうだよ結婚式なんだから。」

「あんたが先に自慢の姉なんか言い始めたのが悪いんだよ。」

「もうやめよう。悪かったよ美咲。ごめん。」

「うん。もういいや。結婚式は成功させたいし。」

「 そうだ、友里姉具合は大丈夫?」

「何急に。見て分かるでしょ。こんなに元気なんだから平気よ。」

「よかった。倒れたりしないでよ。」


友里姉はこう言うが、本当は我慢していることを私は知っている。友里姉はいつ倒れてもおかしくない体になってしまっていた。大事な友里姉だから私はいつも友里姉の具合を気にかけている。


「もうすぐ式始まるみたい。」

「友希乗せたままでいいの?」

「うん。いい。友希がいると安心するから。私の具合がいいのは友希のおかげかも。」

「そう。そんなら良かった。」


本当は未希がそばにいるからって言って欲しかった。友希が産まれてから友里姉は私より友希の方が大切になってしまった。それが未希にとって少し寂しかった。


「皆さん始まりますよ。準備はいいですか。」


係の人が呼びに来た。


「はい。今行きます。」

「行くよ。最高に楽しもう。」

「そうだね。改めて友里結婚おめでとう。」


本当だったらお父さんが新婦と入場するのだが私たちにお父さんはいないので代わりに未希が隣を歩き、美咲が車椅子を押す。友里姉からお願いされていた。


「行くよ。」

「新郎新婦の登場です。」


パチパチパチ

会場に拍手が鳴り響いた。新郎との距離10メートルの所で止まるように指示されていた。友里姉はそこから歩くのだ。ゆっくりと車椅子を押していった。そして途中で車椅子を止めた。何が起きたのかと会場がざわめき始めた。友里姉は友希を抱き抱え車椅子からゆっくりと立ち上がった。彼は凄く驚いている。そして歩き始めた。ゆっくりゆっくり重い足を動かして。未希は心の中でこう呟いた。


「あんなに一所懸命一緒にリハビリしたんだから大丈夫。友里姉頑張って。」


未希は歩く友里姉のウエディングドレスを持ち上げる大役をしながら一緒に歩いた。友里姉はずっと笑顔だった。作り笑顔だろう。時間はかかったけど、彼の所にたどり着いた。彼は泣いている。会場には拍手が鳴り響いている。思わず未希も泣いてしまった。ふと後ろを振り返ると美咲も泣いている。友里姉は彼に抱きついた。


「では未希さんお願いします。」


ここからは私が司会をする。どうしてもやりたいとお願いした。


「えっ!」


友里姉は顔を上げた。


「司会を務めさせていただきます未希です。今日は大変忙しい中2人の結婚式にお集まりいただきありがとうございます。では誓いの言葉です新郎さんお願いします。」

「はい。結婚式をすると決めてから1年が経ってしまいました。無事に友希が産まれ、いつ結婚式をしようか考えに考えて今日になりました。今日は友希の誕生日です。おめでとう友希。そして友里、これから3人で幸せな家庭を築こうね。」


指輪の交換が行われた。友里姉は頑張って立っている。一瞬友里姉の体が傾いて倒れそうになった。それを彼が支えた。友希が重いのだろうか。


「大丈夫?友里。友希持とうか?」

「いい。なんてことない。ちょっと…。」

「どうした?なんかあった?言ってよ。やっぱり友希持つよ。」

「いいって言ってるじゃん!」


凄く強い口調だった。会場に静寂が走った。ほとんど怒らない友里姉が怒鳴った。どうしても友希を離したくないのだろう。私にはこの気持ちが分かる。でも大丈夫には見えなかった。友里姉は我慢しているのが伝わってきた。座った方がいいと私は考えた。


「新郎新婦さんお座りください。」


美咲が友里姉の前に車椅子を持ってきた。友里姉は座り彼が押して行く。


「次は…!私から一つお願いがあります。何かありましたら遠慮なく言ってください。」


友里姉に向かって言ったつもりだった。伝わったかどうか分からないが。


「では次はケーキ入刀です。ミュージックスタート!」


音楽が流れてケーキが運ばれてきた。あんなに怒っていたのに友里姉は笑顔だった。やっぱり友里姉はすごいなと思った。


「行きますよ。せーの!」


この時も友里姉は友希を肌身離さなかった。2人でナイフを持っている。ケーキにナイフが入った。


「いえーい!2人ともおめでとうございます。」


拍手が鳴り響いた。


「皆さんでケーキを食べましょう。好きに席を離れていいです。沢山新郎新婦さんに話しかけてあげてください。」


こんな感じで結婚式はあっという間に時間が過ぎ、御開きになってしまった。

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