第19話-14

「みゆき……もしお前が、俺がそんないけないことを考えている瞬間に、俺の心を読んだらどうなる」


「……タカちゃん」


 男子高校生の妄想はエグイ。

 そりゃもう、割と本気でエグイ。


 そんなのを純粋無垢な箱入り娘のみゆきに見せれるわけがない。

 訳がないのだ。


 そう、エスパー〇美は高畑くんが、完璧な男の中の漢だから成立する。

 そのことをすっかりと忘れて、俺は舞い上がってしまっていた。


 店員さんはそのことを俺に教えてくれたということか。


 ふっ、やれやれ。

 こいつはいっぱい食わされたぜ。

 しかし――おかげで助かった。


「まずかった。もし、うっかりとみゆきが超能力に目覚めたら、俺のみゆきへの溢れる愛が、そして歪んだリビドーが伝わってしまって、大変なことになってしまうことだった」


「……そんな大変なことを考えてるんだねタカちゃん」


「とにかく超能力の検証は延期だ」


 俺が完璧な男になるその時まで。

 そして、みゆきへの溢れるこの想いを、読まれても大丈夫なレベルまで抑えられることができるその時まで。


 先はどうやら長くなりそうだ――。


「俺が男になるまで。まってくれるか、みゆき?」


「待つよタカちゃん、いつまでだって!! 私たち幼馴染じゃない!!」


「……みゆき!!」


「……タカちゃん!!」


「みゆき!!」


「タカちゃん!!」


 みゆきと抱き合いながら、俺は――心が伝わらないっていいなと、そんなことを考えていた。


 だって、もし。

 俺の心が伝わっていたら。


 こんなに密着することなど、とてもじゃないができないのだから。


 うぅん、普通、幼馴染だからって、こんな気軽に抱き合わないよな。

 役得とか思っていると知ったら、みゆき、傷つくんだろうな……。


 うん。

 やはりエスパーでなくてよかった。


「というか、読まれて困るほど好きなら、お前もうそれでいいじゃねえか」


【第十九話 おわり】

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