世界で二番目になったのなら。(仮題)

志斉 駿

はしがきという名のプロローグ

 『××××』という言葉を聞いて何を思い浮かべるか、などと尋ねてみたとしても日常的に聞くような言葉ではないので変な顔をされるのは目に見えている。だが、聞き馴染みのある者の多くは温厚で控えめそうな容姿の女性だったり、意中の人の気を惹くべく世話を焼き愛情を示すも否定されれば病みが深まり、思考も狂っていき暗い結末を迎えていく様子を想像するのは容易だと思う。

 そう、彼女を言い表すならば『××××』なのだ。

 この言葉自体は最近、2000年代に生まれたものだが、よく見られる型に当てはまる女性は昔から存在している。ギリシャ神話であったり、源氏物語の一登場人物なんかは特に有名である。とはいえ、これらは神話や創作物と想像の域を出ない。故にか、萌え文化の一つとして根付いており、現実では犯罪とも言える行動をとる『××××』は実在しない架空の性質なのだ。

 と、私は勝手にそう思っていた。そうすることで私もまた、彼女たちの一途な想い故の行動に恐怖感を抱くことなく、少し想いを受けたいとも思いつつ、あくまで文化の一つとして味わい好むことが出来ていた。

 後から思えば、結構のんきなことをしていたと思う。しかし、創作物と想像の域をあっさりと超え、生まれ持っての加虐体質までも兼ね備えた彼女が存在するとは考えていなかったし、そんな彼女と関係を深めることとなるなんて尚更、予想だにしていなかった。

 

 ――彼女とは、夏目瑞希のことである。


 

 

 

 

 

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