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「でもみんなは変な空だって言うんですよね。なんか怖いって」

「確かに珍しいからちょっと不穏な感じはしたかもしれませんね」

 きっと昔なら何かの前触れだ~とか言ってそうだもん。あれ、そう言えば台風が近づいているんだっけ?

「綺麗なのにそんな風に思うなんてもったいないですよね」

 うんうん、もったいな、え? もったいない?

「だって」

 ちょっと不思議な顔をして返すと、彼女はまたさらっと答えた。

「この空はもう一生見られないかもしれないのに。それを怖いなんて言ってさっさと帰っちゃうなんて、もったいないじゃないですか」

 なるほど。それはもったいないのかもしれないね。“今”は“今”しかないだから。

「あたしなんて瓶の中に詰めて持って帰りたいくらいだったのに」

「瓶の中に?」

「そうしたらずっとあの空を見ていられるでしょう?」

 なんて無邪気に言ってのける。さすがにそれは俺も思いつかなかったよ。

「そうやって見つけた素敵なものを閉じ込めてずっと眺めていられたらいいのに」

「それは素敵ですね」

「ふふ、そうでしょう?」

 と自信たっぷりに胸を張る。全くこの子は、もう二十歳を超えた大学生だって言うのに小学生みたいに目を輝かして言うんだから。

「さすがマコさんですね」

「私も変な子だから」

「そんなこと」

 ない、とはいえないけれど。

「でも、だからこそイイでしょう? みんなと一緒は大好きだけど、みんなと同じは面白くないですから」

「ふふ、そうですね」

 白い肌に地毛でも明るい髪、色素の薄い不思議な瞳を持つマコさんは確かに世の中の普通とは違っているだろう。だからきっと色んなことが大変だったと思う。人間は“違う”に敏感な生き物だから。

 それでもなお無邪気な笑顔を見せるマコさんは美しいと思う。だからこそ、かもしれない。

「そう言えば新しいチョコレートを仕入れたんです。マコさんの瞳と同じ色のチョコレートですよ、よかったら」

 どうぞ、と言葉を続ける前に彼女の答えを一瞬にして理解する。もちろんですとも、沢山召し上がれ。

 

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