序章
水面に一つ、
そうして、花びらが開くように、音もなく彼は生まれ、
──生まれたときには知っていた。
彼が
そして、彼が運命を共にする人のことを。
けれど、彼が生まれた城の中に、その人はいなかった。
弓のような月が満ち、また欠けて、半月になるまで。
冷たい
一人の夜は長くとも。
明日は遠くとも。
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