一幕:美人_a_beauty

「喜ぶ要素が一つもないんですが」

 ハッキリ言って、柄の悪い町だ。表通りのビジネス街は整備が行き届いてキレイだけれど、そのぶん、中心から外れたエリアには後ろ暗い人とモノが集まる。

 おかげで、ぼくは退屈しない。


「おねーさん、もしかして暇? 暇だろ? なあ、遊ばねえ?」


 ほら、まただ。

 崩れた格好をした、体だけ大きな弱虫が、女性に下品な声をかけている。三人集まって、やっと、ナンパする度胸がつくらしい。


 さて、女性を助けるべきか、放っておくべきか。

 女性のほうも柄が悪いなら、ぼくが介入する必要もない。まともな社会人なら、救出するほうがいいだろう。


 もしも美人なら? それはもう積極的に、最高のタイミングで助けに入るべきだ。

 なんてね。そういう期待はいつも胸に抱えているのだけれど、本気にさせてもらえるような女性には、残念ながら巡り会ったことがない。


「ちょっ、すげー美人じゃん! え、これ、度肝抜かれるって!」

「てゆーか、おねーさん、一般人? 芸能人だったりする?」


 不良たちの騒ぎ方が妙に真に迫っている。本当にそんな美人?

 ぼくは半信半疑で、不良たちの背後からその人をのぞき見た。そして思わず、こっそりガッツポーズをした。


 彼女は、薄い色のサングラスを外した。


 日本人の美の基準からすると、個性派といえるかもしれない。ラテン系かと思うくらいの、エキゾチックな美貌。二重まぶたの幅が広く、長いまつげは上向きで、ヴォリュームのある唇もセクシーだ。


 年齢は二十代半ば。ぼくよりもだいぶ年上だけれど、ぼくの好みには完璧だ。春らしい薄手のシャツは、透けそうで透けていない。

 彼女は、不良三人を見据えて言い放った。


「暇だけど、きみたちじゃ失格。どんなに時間があっても、遊びたいと思える相手じゃないわね。ほかの人に声かけたらどう?」


 強い。あからさまに素行の悪そうな男に囲まれたら、普通はそんなことを言えない。


 不良三人はポカンと口を開けた。ナンパしておびえられたり逃げられたりすることはあっても、真正面からふられることはまずないんだろう。


 彼らは、この町の柄の悪さの一因、「えん」と名乗る不良集団のメンバーだ。古典的な暴走族の真似事をして、違法改造したバイクに乗ったり、チームのおきてを作ったり、役職によって納めるべき金銭的ノルマがあったりと、頭の悪いことをして目立っている。


 不良の一人がゲラゲラと笑い出した。残る二人も即座に唱和する。わざとらしい笑い声があたりじゅうに響いた。サーッと、ひとけが引いていく。


「つれないこと言わずにさ、おねーさん」

「一緒に遊ぼうよー」

「絶対、楽しませてあげるって」


 不良たちは三人ともニキビだらけの顔をしている。たぶん高校生だ。よく見れば、一人はボロボロの革靴だし、別の一人は制服のズボンを穿いている。

 ぼくは彼らに近付いて、一人の肩に手を置いた。


「まだ下校時刻じゃないでしょう? サボりですか?」


 不良たちが一斉に振り返って、ぼくを見上げた。三人の身長は大差なく、±30mm以内で、平均して約1,650mm。1,792mmのぼくよりもずいぶん低い。


 ナンパする三人より、美人な彼女のほうが背が高い。ハイヒールの高さは約90mmだから、彼女自身は1,675mmくらいか。


 明らかにひるんだ不良三人が、必死で気合いを入れ直した。


「な、何だ、テメェ! テメェこそ大都の制服着てんじゃねぇか!」

「サボってやがんのかよ! お坊ちゃん校のガリ勉がよ!」


 大都高校のグレーの詰襟を身に付けたぼくは、彼らに笑ってみせた。


「進路指導の学年集会が面倒で、抜け出してきたんですよ。ガリ勉と呼ばれるほど机にかじり付くのは、趣味じゃありませんしね」


「すかした口ききやがって! ナメんじゃねえ!」

「怒鳴らなくても聞こえますが」

「んだと、ぉら! やんのか? ああ?」

「きみたちのセリフはワンパターンですね」


 ここは各駅停車だけが止まる駅の正面で、ゲームセンターとパチンコ屋の前でもある。裏通りで薄暗い無法地帯。警察は、よほどのことがない限り、出張ってこない。


 ということは。

「金出せよ、お坊ちゃん。そしたら許してやるよ」

 カツアゲの汚い手が、ぼくのほうへ伸びてくるわけで。


「あいにく、きみたちに出してやれる金は一円もないんですよ。その代わりに」

 つかみ掛かってくる手を蹴り飛ばす。

「足技なら、すぐに出せるんだけどね。きみたちが満足するまで、いくらでも!」


 至近距離で予備動作なしの回し蹴り。食らった相手は、何が起こったかわからなかっただろう。完全に死角からダメージが入ったはずだ。


 半歩踏み込んで、もう一人。

 長い脚をムチのようにしなわせて遠心力を稼ぐ。力を込める必要はない。相手の重心を見極めるだけ。最適な一点に軽くエネルギーをぶつければ、人間ひとり、簡単に吹っ飛ぶ。


 残り一人も片付けようとしたら、必要なかった。

 不良の凄まじい悲鳴。彼女は平然と言ってのけた。


「あらごめんなさい、つまずいちゃって」


 直径12mmのピンヒールが不良の足の甲に刺さっている。スリットの入ったスカートからのぞく攻撃的な美脚。彼女はヒールに重心を掛けて、さらにぐりぐりと動かした。


 あれは痛い。36π平方mmの面積に、身長1,675mmの女性が体重の過半を掛けたら、踏まれた足の甲の骨は折れるんじゃないだろうか。


 不良三人は、ほうほうの態で逃げていった。

「お、覚えてやがれ!」


 ぼくはたびたび不良をいじめて遊ぶけれど、こんなに安っぽくて典型的な捨てゼリフは初めて聞いた。


 それにしても。

 ぼくは改めて、美人な彼女に目を向けた。あかい髪、朱い光彩、くっきりした目鼻立ち。微笑んだ唇の形が、すごくいい。


 顔立ちだけじゃなく、スタイルも抜群だ。着衣のバストサイズが930mmほどもあって、アンダーがキュッと細く、トップの高さがある。パッドでかさ増ししていないなら、Fカップが期待できそう。ウェストやヒップとの比率も完璧だ。


 ぼくは彼女に微笑みかけた。


「災難でしたね。気を付けたほうがいいですよ。このあたりは、あの緋炎という不良グループがやかましいんです」

「そうみたいね。助かったわ。さすがに三人もいたら、撃退するにも手間取るもの」


 一人で倒す気だったのか、この人は。


 彼女が、ざっとぼくの全身を観察した。見られて困ることもない。

 細身で背が高い、いわゆるモデル体型だ。顔の小ささと手足の長さは数字の上で実証できる。首と肩が成す角度が女性的というか、撫で肩なのが唯一の難点だ。肩幅も男としては狭いから、華奢に見えるらしい。


 彼女は朱い髪を背中に払って、いたずらっぽくクスリと笑った。


「きみなら合格ね。ちょっと付き合って」


 いきなり手を引っ張られた。さすがに面食らう。彼女が向かう先はゲームセンターだ。


「あの、付き合ってって、何なんですか?」

「時間つぶし」

「え? それで、ゲーセンですか?」

「そうよ。悪い?」

「いえ、悪くはありませんが」


 意外というべきか。大人のおねえさんが、ゲーセンですか。


 たいていどのゲーセンも構造が似ている。一階は客引き用のクレーンゲームばかりだ。上の階から、メダルゲームの騒音が降ってくる。

 彼女に手を引かれながら、ぼくはゲーム機の間をうろうろした。


「きみ、ゲーム得意?」

「それなりに。クレーンゲームでも、シューティングでもレース系でも格闘系でもリズム系でも、その場で計算したり判断したり瞬発力が問われたりするタイプのゲームなら、何でもできますよ」


「すごいじゃない。運動神経も勘もよさそうだものね」

「まあ、それほどでもないわけじゃありません」


 彼女がふと、一台のクレーンゲームの前で足を止めた。一回百円の、小型のぬいぐるみが入っている機械だ。


「これ、かわいい」


 わしたかのマスコットだった。翼は黒で、目は緑色。擬人化されて直立し、チェック柄のタキシードを着ている。飄々ひょうひょうとした笑みが、人を食った印象だ。


「かわいいんですか、これ?」

「生意気っぽくて、かわいいわよ。きみ、これ取ってくれない?」


 挑戦的な笑顔を向けられると、無理とは言えない。実際、クレーンゲームは難しくないし。


「おそらく四回目で取れますよ」


 ポケットから財布を出そうとしたら、彼女のほうが早かった。五百円玉が投入されて、残りゲーム回数が6と表示される。


「何で四回目なの?」

「ぼくなりのパターンがあるので」


 最初の二回で、アームの強度や癖、ぬいぐるみの重量を見極める。三回目でぬいぐるみの位置と角度の調整をして、四回目で獲得する。

 結果として、予告どおり四回目で一つ取れた。六回目で、もう一つ取れてしまった。


「ありがとう! すごいね、きみ」


 両方の手のひらに一つずつぬいぐるみを載せて目を輝かせる彼女は、なんだか少女っぽく見えた。セクシーでスタイル抜群な年上の女性なのに、不思議な人だ。

 ぼくは、ぬいぐるみのタグを見た。細かい字で、モデルとなった鳥が紹介されている。


「イヌワシ、ですか。アルタイ山脈あたりでは狩りに使われる鳥。レッドデータブック掲載の希少種シリーズ、と書いてありますね」


 でも、決してかわいくはないと思う。この笑い方、生意気というより嫌味だ。

 彼女がぬいぐるみとぼくを見比べた。


「やっぱりこの子、きみと似てる」

「は? これと、ぼくが?」

「似てる」

「どこがですか?」


「笑い方とか、シャープなようでソフトなところとか」

「意味がわかりません」

「誉めてるんだから、喜んだら?」

「喜ぶ要素が一つもないんですが」


 彼女の価値観によると、このぬいぐるみはかわいい。彼女の目から見て、ぼくはこのぬいぐるみと似ている。ということは、ぼくは、彼女にとってかわいい存在なのか?


 クレーンゲームのガラスに映る自分と視線を合わせる。ウェーブした黒髪と、緑色がかった目、彫りの深い目鼻立ち。かわいくはない。格好いいかキレイかのどちらかだ。


 突然、スマホが鳴る音がした。ぼくではない。


 彼女がぬいぐるみをバッグに落とし込んで、そのバッグの中からスマホを取り出した。ぼくが目の前にいるのに、ちゅうちょなく電話に出る。


「もしもし? もう、遅いのよ。ゲーセンの中にいる……うん、一階」


 待ち合わせ相手がいたらしい。まあ、そういう雰囲気だったし。さっき、ぼくには「時間つぶし」と言っていたし。


 スマホを耳に当てながら、彼女が伸び上がって手を振った。ぼくは振り返る。彼女と同じくスマホで通話中の長身の男が、軽く手を挙げた。


 なるほどね。イケメンだ。ぼくとは違うタイプ。垂れ目がちで、唇が厚くて、肩がガッシリしている。


 彼女は電話を切った。スマホを耳から離した弾みで、ピアスが跳ねた。先端に石が付いた細いチェーンが髪に引っ掛かった。


「ちょっと失礼」


 ぼくは思わず、彼女のピアスに触れた。小さな振り子の運動はキレイだった。その動線を阻まれるのは惜しい。


 彼女の朱っぽい髪を掻き上げた瞬間、彼女はかすかに体をこわばらせた。髪と同じ色の目が、意外な近さで、ぼくを見上げる。


 キスができそうなほどの距離。というよりも、ぼくの仕草は、まるでキスを予告するかのよう。


 違う。そんなつもりはなくて。

 時間が止まった。そう感じた。


 ピン、と空気が張り詰めた。チカラを感じた。一つの「声」が、気迫の熱波を噴き散らしながら飛んできた。


【おいおいおい、ちょっとちょっと、いきなりそういうの困るよ~。一メートルぐらい後ろに下がってくれる?】


 空気を振動させない、つまり音を伴わない「声」が、ぼくの耳を介さずに、ぼくの意識をダイレクトに打った。何らかの攻撃性を秘めた「声」だと感じた。


 驚いた。

 まちなかでこんなに無防備にチカラを使う人がいるなんて。


「テレパシー、ですか?」

【え、何、おれのチカラ、効かないの? うっわ~。ってことは、きみも能力者?】


「チカラが効かない、とは? 今の声、ただのテレパシーじゃないということですか?」

【うん、命令するテレパシーのはずなんだけどね~。きみ、後ろに下がりたくなったりしてない?】

「してません」


 ぼくの胸で、ペンダントヘッドの宝珠がドクンと脈打った。よく似た鼓動を、彼の胸元にも感じた。


 そのエネルギーの値は、ぼくの目で分析できない。三次元の物理学では解明し得ないチカラ。本来、人間が手にしてはならないモノだ。


 チカラある声を操る彼が、空気を振動させる肉声で言った。


「お仲間って感じがするね。おれのしゅじゅうしゅが反応してる。何となくだけど、きみ、げんでしょ」


 彼はぼくより20mmほど背が高い。身に付けている制服は、隣の市のじょうよう学園のものだ。


 警戒せざるを得ない。彼は、ぼくと同じ四獣珠の預かり手の一人。つまり、ぼくと同等の能力の持ち主ということだ。


 ぼくは顔に笑みを保ったまま、彼を計測する。重心移動から読み取れる、身体能力の程度。無機物の分子の存否でわかる、武器の有無。彼のチカラは本当に「声」だけなのか。


 彼は笑いじわとえくぼを作って、両腕を広げた。


「おれは、な~んもしないって。ケンカも強くねぇし、悪意なんて全然ねぇし? 『声』もさ、能力者やその家系の人間には、ほぼ無効なんだゎ」

「ほぼ無効、とは?」


「文字どおりだよ。おれの能力、マインドコントロールなんだけど。『号令コマンド』っつって。一般人には、けっこうどんな指示でも有効なのにね、預かり手の血を引く人間は、そーいうのに耐性あるっしょ? 宝珠を守るための血だか遺伝子だかが、そんなふうに働く」


 確かに、ぼくのような血筋の人間はマインドコントロールのチカラに抵抗できる。よほど強力なものでない限り、支配下に入ることはない。


 ならば、彼の能力はぼくにとって安全だ。信用はしないまでも、警戒を解いたって問題ない。いざとなれば、ぼくのほうがはるかに強く、有利だ。


「きみの言うとおり、ぼくは玄武、すなわちげんじゅうしゅの預かり手です。でも、驚きました。じゅうしゅは本来、別々の場所に存在したがる性質を持つ。そう聞いていたので」


「原則、バラバラ独立って言われてるよね。だけど、おれはそこまで驚いてないよ? おれさ、予知夢っていう特技があんの。最近、玄武くんのことも夢で見てたよ。そのうち会えるかなーって思ってた」


 彼のゆるゆるとしたしゃべり方は、どうにもさんくさい。接触するにせよ、まずは自分で事実関係を調べておくほうがいいだろう。


「お邪魔してしまいましたね。きみ、彼女と待ち合わせをしていたんでしょう?」


 ぼくは、仮面のように顔に貼り付けた笑みに、愛想を込めてみせた。


 能力者の彼が美人な彼女の前で平然と四獣珠の話を出したということは、彼女も四獣珠について知っているわけだ。彼女に対しては、玄獣珠は反応しない。彼女は能力者ではないはず。じゃあ、何者?


 彼は友好的に、ぼくに右手を差し出した。


「おれ、ながひと。この制服を見てのとおり、襄陽学園に通ってて、三年だよ。きみ、大都高校だよね。その校章の色、三年じゃないっけ?」


 彼の瞳孔は位置も形も安定している。視線がブレない。悪意や虚構がない表情、と言っていい。ぼくは彼の右手を握った。


「大都高校三年のさとかいです」

「イケメンだね~」

「きみもね」

「そりゃどうも。で、能力者なんだよね? どんなチカラ、持ってんの?」


 黙っていた彼女が口を開いた。


「視覚的に優位な能力、でしょ? 海牙くんの目、他人よりたくさん見えてる。違うかしら?」


 朱みがかった瞳が、射抜くようにぼくを見つめた。

 何をどう観察して、その結論に至ったんだろう? 尻尾を出すほどのことはしていないはずなのに。


「おおむね正解です。ぼくのチカラは『力学フィジックス』。視界に映る情報が、数値化して立ち現れます。ぼく自身がその計算方法を知っている数値のみ、ですが」


 それ以外の、計算式が未知のものは、うじゃうじゃとうごめく多足の虫みたいだ。何らかの文字に見えるけれど、読めそうで読めない。


 処理できない情報が視界にあることは不快で、しかもそれらは意外と身近にあふれている。気にし始めると、ストレスがたまる一方だ。


 理仁くんは目を丸くして首をかしげた。


「情報が数値化って、んじゃ、おれの身長とか?」

「1,821mm、計測に誤差があるとして±3mm、ですね」

「すっげ~、正解! んじゃ、姉貴のスリーサイズは?」


 理仁くんが言った瞬間、彼女がエナメルのバッグの角で、理仁くんの頭を殴った。痛そうな音がした。


 スリーサイズくらい、一瞬でわかる。対象を三次元的に観測すれば、後は中学数学レベルの計算式を解くだけだ。

 でも、さっき、スリーサイズという言葉よりビックリな単語が聞こえたんですが。


「姉貴、ですか?」


 思わず無遠慮に見比べて、なるほどと納得した。髪の色も目の色も似ているし、顔立ち全体の数値もかなり近い。鼻筋から瞳までの距離、小鼻の角度、唇の稜線。


 能力者の姉なのか。だから、四獣珠のことを理解している。


「わたし、弟と待ち合わせって言わなかったっけ?」

「聞いていません」

「もしかして、これがわたしの彼氏だと思った?」

「ええ、まあ」


「ちょい待ち、姉貴。これっていう指示代名詞はひでーんじゃない?」

「十分でしょ」

「やだもう意地悪~。おれねる~」

「ええい、うっとうしい」


 テンポよく交わされる軽口に、ぼくは少し笑った。ぼくは一人っ子だ。仲のいいきょうだいと町に出掛けるなんて、想像もつかない。


 姉弟は急ぎの用事があるらしい。面会時間と聞こえた。時計を気にしながら、足早に立ち去っていった。

 と思ったら、彼女が駆け戻ってきた。


「記念に一つあげるわ。今日はありがとう。じゃあね」


 笑顔で押し付けていったのは、イヌワシのぬいぐるみだ。手ざわりはいいけれど、やっぱり、別にかわいくない。ぼくに似てもいない。


「あれ?」


 イヌワシが身に付けたチェック柄のタキシードのふところに、紙が挟まれている。紙を広げると、彼女の名前と連絡先だった。


「リアさん、か」


 予想もしなかった展開だ。胸が騒いだ。

 連絡してみようと思った。

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