第93話徹也がインフルエンザに罹ったその1

 不幸にも徹也は今年の冬の、大学が冬休みのときに、久しぶりにインフルエンザに罹ってしまっていた。

 当然ながら外出は厳禁で、今も三十九℃近辺の高熱が出ており、医者からは当たり前のように、タミフルを処方されていた……。

 幸いにも大学はもう冬休みに入っていたし、仮に大学の授業がある期間であっても、インフルエンザによる外出禁止であれば、当然ながら何らかの配慮はなされるはずなので、そこのところは、徹也は安心は出来たが……。

 徹也は母親に、次のように言った瞬間だった。

「母親ー、苦しいよー。水を持ってきてくれないかー! またアイスマンの氷枕を、取り替えておくれー! あとヨシヨシと抱擁しておくれよー!」

 すると徹也の部屋に、突然園里がやって来たのだった。

「こんにちは。徹也。私がお見舞いに来てあげたわよ」

「ひょわっ!」

 突然徹也の部屋に入ってきた園里に対して、徹也には一瞬何が起きたのかが、よくわからなかったため、徹也はそう奇声を発してしまった。

 布団の上で横になって寝ている徹也に対して、園里は、

「なに徹也、あなたインフルエンザに罹ったんですって? だから私がこうして、お見舞いに来てあげたわよ!」

 それを聞いた徹也は、

「園里、なんでお前がうちへ来るんだよ?」

 徹也はそう園里に聞き返すと、園里は、

「私は五十二番遺伝子障がいのおかげで、インフルエンザには感染しないからね。だから私が中学のときのメンバーを代表して、徹也のお見舞いに来てあげたって、そういうわけよ!」

 園里は話を続けて、

「徹也さ、何が『ヨシヨシと抱擁しておくれ』よ! それを聞いたら徹也って誰だって、徹也って甘えん坊さんなのねって、そう誰だって思うわよ!」

(くそっ! よりによってなんで園里がうちにやって来るのだよ……。どういう風の吹き回しだよ! それと『ヨシヨシと抱擁しておくれ』なんて園里に聞かれて、あーマジで死ぬ死ぬ……)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る