第193話やり遂げたのだからもう泣かないの!

 実際に演奏を終えた六人は、私たちはやるだけやったのだ! やり遂げたのだ! といった表情を、六人全員がしていた。まずは徹也が、

「久しぶりに集まって、あまり全体練習が出来なかった中では、まあまあ上手く出来た方だったのじゃなかったかな?」

 徹也がそう言うと、今日子も、

「私もコード抑えるのに手一杯だったけれども、最後にあれだけの拍手がもらえたのだから、一応は形になったのだと、そう思うかな?」

 すると瞳が健のドラムに対して、

「健ちゃんのあのドラムの激しさ、相変わらず健在だったよね! 多分ブランクがあったとは思うのだけれども、それでもあれだけのドラムが叩けるって、なかなかそうは出来る人はいないわよね!」

 瞳からそう言われた健もすかさず、次のように雪絵に声をかけた。

「笹森さんも、しばらく人前では歌っていなかったのに、あれだけの声量が出せて、しかもあれだけシャウトが出来るって、なかなか凄いことだと、僕は思いますよ!」

 そして今度は雪絵が、今回この日のために集まってくれた五人に対して、涙声が止まらない状態で、

「皆……今日のために……集まってくれて……どうもありがとうね……」

 それを聞いた園里が一言、雪絵に対して、

「雪絵、とにかく今回はとりあえずは良い形になったのだから、それ以上はもう泣かないの! あとね雪絵、今回の演奏でわかったと思うけれども、あなたは本当は『出来る子』なのだから、もっと自信を持って、生きていって良いのよ!」

 園里の雪絵に対する労いの言葉を、そこまで聞き終えた徹也が、最後に、

「じゃあ、これからは皆が好きに学園祭を回ってみて、再度もう一度この辺りで集まって、それから打ち上げにでも行こうか!」

 徹也のその提案を聞いた五人は全員が賛成をして、それぞれが思い思いに、特に雪絵にとっては、慶応SFCの学生としては、あとは最後に留年さえしなければ、最後の学園祭となるために、出店を回ったり、部活の展示などを見て回って、学園祭を六人のメンバーそれぞれが、思い思いに楽しんだ…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る