第112話そして結果は
慶応の商学部と、文学部と、そして経済学部と法学部の合格発表のために、直接合否をこの目で見るために、雪絵は慶応のキャンパスへと出向いた。雪絵は掲示板に張り出されている番号を見る。
しかし残念ながら雪絵の番号は、掲示板にはなかった。
「私また落ちた……もうダメかもしれない……」
その日はどうやって慶応大学のキャンパスから、自宅へと帰ったのか、雪絵の記憶からはその部分が飛んでしまっていて、気がついたら自宅の自分の部屋で、ベッドにうずくまって、泣いていることに気がついた。
そして運命のラストチャンスの日がやってきた。
慶応としてはラストチャンスのSFCの合格発表である。ここでダメならすべてが終わりである。雪絵にとっては本当にラストチャンスだった。雪絵は恐る恐る掲示板と、自分の受験番号を照らし合わせる。すると……。
「あった……私の番号が……あった!」
とうとう奇跡が起こったのだ! 雪絵は気持ち半分、自分の番号が掲示板に掲示されていたことが、信じられなかった。
「お父さん……お母さん……受かった……私……慶応に受かっ……」
そのときだった。何かがプッツンと切れたような音が、雪絵には聞こえた。
「うっ……」
目の前が真っ暗になった。と同時に、
「バッ!」
と、血溜まりを吐いて、雪絵はその場に倒れ込んでしまった。
「キャー!」
と、雪絵の一番近くにいた受験生が叫び声をあげる。そして合格発表を見に来た受験生たちの視線が、いっせいに倒れた雪絵の方向へと向く。
「おい君! 大丈夫か? しっかりしろ!」
悲鳴と怒号が飛び交い、そして厳粛な合格発表の場が、一瞬にして血の海と化した。
そして雪絵はすぐさま、救急車で慶応病院に運ばれた……。
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